駄文

□秋霖
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さめざめと、
雨が降る。



梅雨も嫌いだがこの季節の長雨は更に嫌いだ。


じわりじわりと躯に寒さの毒を廻せ、
身も心も冷えて凍って








誰かに甘えたい。

そんな戯れ事考えてしまう程に心を弱らせてしまうから。


寒々降る雨が

嫌いだ。















「何故こうも雨が降る…」


扇の端を噛りながら三成は苦虫を潰したような顔で天を仰いだ。


部屋には一人、
筆を進めようにも寒さにつくづく弱い体。
特に指は、強張り持ち主である三成の言う事なぞ一切聞かず、無理矢理動かせば紙に散らばる無惨な文字文字。


幾度か無駄な抵抗を心見たが無駄なものは所詮無駄。
諦めて座った形からそのまま後方へ倒れると見たくも無い憎らしい雨雲を纏った天の姿が。

しんとした部屋にいるとふと可笑しな感覚に陥る。
手足から寒さが染み込み、心の臓を掴もうと躯の芯へと昇りくるような
ぞっとする感覚。



「…雨を降らせるのはそんなに楽しいか…?」


そんな感覚を振り切ろうとあたかも天が口を聞けるかのように呟くと聞き覚えのある忍び笑いが聞こえてきた。

「で?天は何と答えました?」


ゆっくりと、
天から視線を横に大義そうに向けてやる。

開いた襖に軽く寄り掛かり、腕を組みながらにやにやと、三成が好きではないが嫌いでもないにやけ面で男が立っていた。


「左近か…」


向けた視線を再び天へと戻し、息をつく。



「お前のくだらぬ問いに答える暇は無いと、そこにいる男にでも聞いてみろだと」


苦笑いにも近い笑みを浮かべ精悍な男は部屋へと踏み入る。
少しだけ躯が暖かくなったのは気の所為だろう。


立ったまま開け放された障子から天を見上げる。
こんな角度から左近の顔を見た事が無かったから三成はまじまじと左近の横顔に見入った。


−男らしいを絵に描いたような顔だ−


ぼんやりとそんな事を考えた。
後から考えたらそれは惚気と言うのではないだろうか。


「きっと」


不意にこちらを向いた左近に三成はどきりとした。







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