駄文

□刀痕。独占欲の幽囚
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幾度目の逢瀬か。

彼の男の裸体を幾度見たか。





「どうなさいました?殿」


上半身を露出したまま、何か書を読んでいたのか背中越しにこちらを見ている。


向き直ると筋肉の乗った美しい背中とは対照的な勇壮な前部がまろい明かりに照らされていた。


引き攣れた、傷痕の数々ー。
それは左近がどの位の戦を、修羅場を乗り越えて来たかを物語る。


「殿?」


男らしい手が三成の艶やかな髪を撫でる。
撫でた後に必ず左近は髪を梳き耳に髪をかけてくれる。
何だかくすぐったい感じがするが三成は嫌いではなかった。



今度は珍しく三成が手を伸ばす、雪肌の細い指が左近の傷痕をなぞる。
一際大きな傷痕を、そうと、痛む傷−随分古い傷なので痛む事は無いが−に触れるように優しく労る様に撫でる。



−こんな事、考えてはいけない−








左近の体にはしる傷は全て三成では無い、以前の主の為に出来た名誉の証。


自分の配下になってからは怪我らしい怪我は一度として無い。



それが三成にはもどかしい。





愛しい人が無事で帰って来てくれるのが一番良い事



なのに


傷痕は左近の人生だけでなく三成に嫉妬心を教えてくれる



傷を、
終生消えない傷を
俺の為の傷を





−これは考えてはいけない事−



後悔するのは自分自身。








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