駄文
□手解き、心解き
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〜♪
珍しく執務が一段落着き、何をするでもなく部屋で天井の染みやら、俯せになり畳の目を数えていた時にするりとそれは入ってきた。
「…?…」
琴の音色だ。
何かの曲を弾いているらしいが名前までは分からない。
だが自分の好きな曲だと思った。
優しく、涼やかで穏やかな曲−…
♪〜♪♪
導かれるように音の根源を探す。
「ここは−…」
〜♪〜♪♪〜〜♪
「…−殿!」
ぴたりと琴の音が止まる。
「…意外だな、左近が琴を弾くとは」
胡座をかいて先程まで琴を見詰めていた顔がこちらを向いた。
琴を挟んで真正面に座る。
螺鈿やらの装飾がなされた琴は華美で、到底この精悍な男の持ち物とは思えないー
「多少噛った程度ですよ」
武骨な男らしい指が弦を弾いてゆく−
♪♪♪
琴は武骨な指から生み出されたとは思えない程雅な音で唄う。
「簡単に…弾けるものなのか?」
「弾いてみますか?」
こくんと頷いた。
元来三成は執務等に追い立てられ、締め上げられるのは得意だが、逆に自由や、暇などゆるゆるとした時間が苦手だった。
ぽかんと空いた時間は何をして良いか分からない。
だが、琴が弾ければ時間は潰れるし、習えば好きな時にあの曲が弾ける。
一石二鳥というものだ
琴の前にちょこんと正座して見よう見真似で指で弾いてみるー
ー♪
少しの優雅さも感じられない音色だ。
ー♪♪
「何故だ…?」
首を傾げ、弦と指と睨めっこをする。
「!!」
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