駄文
□解語の華。
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これが人たらしたる所以か−
主、羽柴 秀吉がわざわざ佐和山城まで訪ねて来たと思ったら
「ひ…秀吉様、顔をお上げ下さい」
「いんや、三成がうんと言うまで儂ぁこうしとる!!」
いきなり自分に額を畳に擦りつけ、土下座をしてきた。
主の行動に三成は困惑しきっている。
何でも、主の友人が女にこっぴどく振られ、それに加え、女と思って口説いてみたら女は男であって、
自分はもう駄目だ等とこの世の終わりのように嘆いているらしい。
「ダチの為に出来るなら女子を紹介したいんじゃ…だが」
恐妻に女遊びが過ぎると釘を刺されていて、紹介しようにも自分は女と話しをする事さえもままならないと言う。
はぁ、と溜め息を一つ。この御方には敵わないと頭を下げたままの主の肩に手を置く。
「俺は何をすれば良いんです?」
瞬間、顔をぱぁっと輝かせ、三成の手を取る。
「三成はほんに綺麗な顔をしとるの〜」
…?。嫌な予感。
「はぁ…有難うございます」
「肌は象牙色で、そこらの女よかずぅ〜っと綺麗じゃの〜」
「まさか…」
再び、三成の言葉を遮るかのように土下座をする。
「頼む!!三成!!!奴は良い奴なんじゃが…手が早い奴での」
「だからって…」
「普通の女子じゃ結果が見えとる!儂はダチの傷口に塩を塗る事は出来ん!!」
いっそ、傷口に塩を塗って、暫く悪さが出来ないようにすれば良いのにと三成は思ったが、
「後生じゃ、三成〜。ダチの…いや儂の為と思うて…な…な…?」
この目、
世の人々は上手い事を言う、
人たらし−
「分かりましたから…顔をお上げ下さい」
三成はまた溜め息を一つ落とした。