駄文

□比翼の鳥
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「お前様っ!!」


今日も今日とて、女傑、北政所ことねねのお説教が聞こえてくる。


何故自分が居る時に限って、いや、ねねの説教は毎日の事、自分は運が無く、大阪に来る度に説教の現場に出くわしてしまうのだ。


一番良いのは、見つからず、足音、気配を消し、この場を去るのみー…


「あ!三成ぃ!!」


流石は忍者の端くれか、はたまた目敏いだけか、見つかってしまった。三成は素直にねねの元に向かう。


−こういう時にアレコレ言えば面倒になるだけだからな−


幼名の頃からの付き合いで、すっかり学習してしまっている。



「どうなさいました?おねね様」


ねねが出て来た部屋の障子戸の僅かな隙間から中を覗く、
覗いた後、見なければ良かったと後悔した。

「家の人ったら非道いんだよ!!ま〜た浮気だよ!う・わ・き!」


目の前で憤慨する奥方に障子戸の向こう側で正座させられ、小さくなっている三成の、天下の主、太閤秀吉−





「秀吉様には御子息を残すのも仕事の内で…」


「だったら側室で充分だよ!なのに家の人ったら−」


まずい、
秀吉を庇ったのは、ねねの怒りの火に油を注ぐに等しい行為であった。

「わざわざ城下に降りて女の子のお尻追っ掛けてて、危うくお縄になる所だったんだよ!!!」


その後、ねねは配下の透波にその事を聞き、大急ぎで謝りに行き勘弁してもらったらしい。


「あんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだよ!!」



わざと障子戸の向こうまで聞こえるような声で言うと、三成は真似しちゃ駄目だよ、と続けた。



「私には関係ありません…」

「まぁね、で〜も〜」

何やら含みのある言い方に眉を潜める。


「でも?」


「左近とかいう子。あの子は要注意よ!」


左近の名前が出て一瞬びくりとする。


二人の関係をねねは知らない(多分)





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