駄文

□篠突く雨、皐月闇
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−昔−



幼い頃−





急に『死』というものを意識した、





篠突く雨が降る夜−




年の割には達観していると思ったのに、


螺旋を廻るよう、思考はぐるぐると、答えに行き着く事は無く、





怖くて、心細くて





泣いてしまった


夜闇がいつもより深くて暗いものだと思った。



でも、自分は昔から素直でなく、この時も布団を頭まで被って、声を殺して泣いていた−




なのに−




佐吉、と優しい声がした




幼い自分には何故ばれたのかが気になっていた−



おいで、と井炉裏のある部屋に呼ばれた。




そろそろと布団から出ていった。明かりが、光りが無性に恋しかったから



行ってみると井炉裏の側でにこりと微笑む我が主



さぁ、と暖かくて柔らかい手に押されて、井炉裏端に行けば、人懐っこい笑顔が迎えてくれて、





質素倹約を家訓とするこの家で、夜中まで井炉裏に火をいれておく訳が無い、自分の為に焚いてくれたのだと分かり、





小さく
ごめんなさい、と呟くと





御免と、
怖い思いをさせて、もっと早く気付いてやれなくて御免と





暖かな手で頭を撫でてくれて、




思わず泣きじゃくってしまった−





背中を摩りながら優しい主は、井炉裏の火よりも暖かな声で





−きっと−


また、こんな時が来たらお前には





夜闇からお前を守って、包んでくれる人が居るから

泣かなくても良いよ。


と言ってくれた。
言葉はじわりと胸に染み、嘘ではないと思った−


だって人はこんな顔で嘘を吐く事は出来ない




−昔の話し−
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