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□鬼は外福は内
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「ねぇ銀ちゃん、アレは何?」



晩ごはんを食べおえて、テレビを見ていた神楽が、銀時に質問した。


「アレだろ豆まきだろ、節分だからな」


夜のニュースには、大きな神社で、有名人たちが炒り豆をまく姿が映し出されている。


「そっか、今日は節分でしたね」


テーブルを拭きながら、新八もテレビを見た。


「ふーん…なんの意味があるアルか?」

「家の中の福を払って、鬼を呼び込んでんだろ」

「違いますよ銀さん、逆です、逆」

「違わねーよ、だってオレ去年、ちゃんと豆まきしたんだよ?なのに見てみろコレ、餓鬼が三匹も入り込んできやがっただろーが」


「僕らのことかオイ」


ムッとして新八が銀時を睨む。

それでも銀時は、挑戦的な表情で


「他に誰がいんだよ。飢えと渇きに苦しむ亡者が二匹に、童貞が一匹」

「童貞関係ねーだろォォォ!」


思わずツッコミを入れた新八を横目に、亡者の一匹、神楽が一言


「類は友を呼ぶアル」

「誰が童貞だコノヤロー!」


今度は銀時が吠えた。


「同じ傾向を持つものは、自然に集まってくんだヨ、疫病神が」

と、ハナクソをほじりながら言う神楽に

「ハハーン、てことはお前も疫病神じゃねーか」


と、銀時があげあしをとった。…っつーか


「お前もってアンタそれ認めてんじゃん」

自分も疫病神だって。


「私は童貞じゃないモン」

「結局その話かよ!」


チラリ、とこちらを見た神楽に、新八は思いきり不満な顔をしてみせた。


「ねーねー、私もやりたいヨ、豆まきー」


駄々をこねだした神楽に、銀時はあからさまにイヤな顔をした。


「あ?やらねーよ、あんなメンドくせーモン。部屋中にまいた豆、誰が片付けると思ってんだ」


「それたぶん僕ですね」



まるで自分が迷惑するような発言をした銀時だったが、きっとそんなことはない。今までの経験からして、絶対、片付けるのは僕だろうな、と新八は思う。


「いいじゃないですか、銀さん。それに年齢の数よりいっこ多く豆を食べると、一年健康でいられるっていいますし、やりましょうよ」

「新八ィ」


新八が味方についてくれたので、神楽は嬉しそうだ。


「なにお前ら、そんなに豆食いてーの?年齢の数ってお前、年寄りに苦行を強いる悪魔のミサだぞ、こんなもん」

「趣旨、ま逆になってっけど」

「やろうよォ新八〜、お願いネ銀ちゃん、明日友達に会って、昨日どうだった?盛り上がったの?豆、何粒イケた?とか言いたいアル」

「飲み会の報告かよ」


手を合わせる神楽。


「神楽、お前今年も一年、健康で過ごす気なの?たまにはよォ、病気にでもなって食欲なくしてみやがれ」


と、銀時は呆れ顔で言う。神楽はふくれっ面をして


「何だヨ冷てーな、オマエのその鬼のようなココロを追い出して入れ替えてやろーか!
今年の受験は見送って満を持して来年に臨むとかいう浪人の魂と入れ替えて、浪人形にしてやろーか!」


「デリケートな発言をしろォォォ!うまくねんだよ!」


時節柄、気ィ使いの新八がツッコミを入れた。


「もっとハッキリ言っても良かったけど、同人だからこれでも気をつかったアル」


ちょっとションボリした様子の神楽に


「もー、しょうがないなァ。じゃぁ今から豆、買ってきましょうか」


新八は銀時の顔色をうかがう。


「待て待て新八、よく考えてみろ」

「なにを、ですか?」


神妙な顔をした銀時に、新八も眉根を寄せた。


「豆まきん時ァ決まり文句があるだろ?」

「あ、ハイ。鬼は外福は内、ですよね」

「そう、そして我が家にはお隣さんがいるだろ?」

「え?…あぁ…」


和室のほうに視線を向ける銀時を見て、新八はお隣さんで花屋を営む、屁怒絽さんの風貌を思い描いた。
巨体に鋭い眼光、大きなくちに並んだ牙。そして頭に生えたツノ…鬼、というのがピッタリ、つーか鬼以外のナニモノでもない、かも。


「いやでも、気にしすぎじゃないですか?」

「バッカお前、そういう些細な事からご近所問題は派生していくんだよ」


苦笑いを浮かべる新八の耳に、階下のお登勢とキャサリンの大声が聞こえてきた。


―― 福ハーウチ!出テイケ、クソババァ!

―― 何だとコノヤロー出て行くのはテメーだろーが!


「ほらな、ババァどもだってああして気ィ使ってんだろ?」

「う〜ん…」


気を使ってる、のか?いつもの喧嘩に聞こえるけど。


「それによォ、こんな時間じゃもう豆も売り切れてるよ、きっと」

「……」


神楽がガックリと肩をおとした。


「豆まきは無理でもよ、節分は他にもやることあるんだぜ?ヒイラギにいわしの頭を差して、魔除けにしたりすんだよ。
とがったモンに臭いモンが刺さってんのが効くんだってからさ、竹串でいいだろ、あとは刺すもの何かあるだろ、何か臭いモン」


よっこらしょ、と銀時が立ち上がったと同時に、ピンポーンと玄関チャイムが鳴った。




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