人が電話してる時は静かにしなさい!
□其の三
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「まったく、こんな回りくどいことしねーで、通報すりゃァ済む話なのによ」
「荒っぽいわデリカシーはねーわ、しかも、呼んでもないのにゾロゾロと」
「ナンだとォ、テメェェェ」
「一般市民に手ェ出すのかアァコラ」
「おまえらやめなさいコラ、マスコミ来ちゃうから」
バズーカの煙で息苦しいビルから路上に出て、逮捕された詐欺グループの男達を残らず連行するのを待ちながら、
土方と銀時がいがみ合っているのを、近藤が仲裁する。
お互い、刀の柄に手をかけて、巻き舌で言いあう二人のほうが逮捕された悪人のようだ。
バズーカに驚いた近所の人々が道に出てきて、ビルを見上げて騒然としていた。
消防署には通報がされているだろうし、近藤の言うとおり、
繁華街の近くでこれだけの騒ぎになれば、夕方のニュースでとりあげるべくテレビ局が駆けつけてくるに違いない。
「ありゃ、はじまってる」
人垣をかきわけ、菊を連れた山崎が、いがみ合う二人を見て、苦笑いした。
土方に万事屋の動向、行き先を報告するべく、かぶき町から渋谷まで尾行していた山崎に、
尾行(つけ)られている本人達自ら声をかけて、菊と一緒に待っていてもらったのだ。
小さい女の子一人では心細いだろうと、山崎は快く承知して、律儀に今まで付き添ってくれていたらしい。
「ウチの局長がお人好しだからこうしてなァ」
「恩着せがましーんだよ、大体お人好しって…ナニそれ、ヒトぉ?」
「何だとヒトじゃねーってゴリラってか?アァ?」
「ダメだって、ちょっとホラおしまいっ!」
もみ合う大人達の後ろを、兄が連れて行かれるのを見つけて、菊は思わず、声をかけた。
「あっあのっ!」
罰を受けるのは当然、そう覚悟していたけれど、実際に連れて行かれる兄に、言葉を探した。
「私、あの」
菊に気付いた兄が、顔を向ける。
「銀ちゃん、やれやれ!そこアル!」
「イタイッ神楽ちゃん足踏んでる、僕の!」
「そうだそこだ、やっちまってくだせぇ」
「きこえてんぞ、総悟ォ」
「ゴリラ好し?アレ?ゴリラ好き?」
「あぁもうゴリラ好きでも大好物でもいい!だからやめなさいぃぃぃマスコミがぁぁぁぁ!」
「アレ?局長ってゴリラ好き?」
視線を逸らさず、顔をあげて、晴れ晴れとした表情で自分に微笑む兄に、菊も満面の笑顔で呼びかける。
「兄ちゃん!」
菊の笑顔のように、鮮やかに彩られはじめた空へと、崩れかけたビルの窓からゆっくりと煙が立ち上っていた。
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おまけ
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