誘われたら乗っておくのがおつきあい

□其の四
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「お前さんの兄貴なぁ、どこにも行きゃしねーよ」


銀時の背中に、全員が注目する。




「けど、このまんまじゃ人の道ってヤツから外れて流されていっちまうかもしれねぇ。否だろーと、応だろーと、はずみで流れっちまうこともある。
だがな、俺たちに首突っ込ましたらケジメはつけるぜ」


まるで天気の話でもしているように、銀時の声は、さりげない。


「流れから引っ張りあげて、めでたしって訳にゃいかなくなるが、それでも手ぇ伸ばしてみるかよ」



銀時の背中をみつめて、菊が頷く。



「悪いことしたら、罰を受けるのは当たり前です。兄ちゃんのままでいてくれるなら、それがいい」


膝に置いた小さな手で、ぎゅっと着物をにぎりしめ


「お金はちゃんと払います。足りない分は、時間がかかっても必ず用意します。キャバ嬢になっても遊女になっても、だからっ…」

「バカいえ」


叫ぶように訴えた菊は、振り返った銀時の表情を見て、次に言おうとしていた言葉を失くした。



少し困ったような、優しい笑顔を傾けて、銀時は


「キャバ嬢だ遊女だ、軽々しく言うんじゃねーよ。アレが勤まんのは、野郎より肝の据わったジャジャ馬よォ」


そう言うと、机に立て掛けた木刀を、左手で無造作に掴み


「まぁ、素質はありそうだけどな。心配すんなよ、万事屋にまかせとけって」


菊の肩を右手で軽く、ポンとたたいて、居間を出ていった。


銀時に桂がつづく。


新八と神楽も立ちあがって


「そうだよ、今どきのキャバ嬢は、ゴリラと対決できるくらい、腕っぷしもなくちゃならないしね」

「バカ兄貴を持つ苦労は、身にしみてるヨ。一発ぶんなぐって、目を覚まさせるアル」

だんっと強く足を踏み鳴らす神楽。


「兄貴の殴り方、教えてやるネ」




新八と玄関に向かいながら神楽が振返り、菊について来るよう促す。エリザベスが、ゆこう、と書いた看板を示した。






ゾロゾロと出掛けていく一行を、路地からそっと見送った男は、上司である土方へ報告するために隊服のポケットから携帯電話を取り出して番号を押した。


「あ、もしもし、山崎です。旦那達、動きました」


真選組の監察を任される、丁寧な仕事ぶりの彼は、さらに情報を付け加えた。



「桂も一緒です、間違いないです」



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人が電話してる時は静かにしなさい!
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