近藤さんとお妙さん

□勘違いじゃなくなる恋もある
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…いやけど待てよ。


立ち上がってガッツポーズを決めながら、近藤は少し、冷静になって考える。

隣で微笑むケツ毛菩薩、もとい、お妙さんは、はたから見ても可愛らしい女性である。



彼氏、ホントにケツ毛ボーボーだったりして。




「お妙さん、彼氏…いるんだ?」

「もしもって言ってたじゃありませんか」


ぃよしッ!



まさか近藤も、接客を生業(なりわい)にする女性の言葉をうのみにするほど、うぶではない。


けれど、拒絶するのであれば嘘でも認めるだろう。連れ添う男の存在を。
いるともいないともハッキリせず、はぐらかした妙の言葉に、近藤はまだ自分が想いを寄せる余地があるような気がした。



望みがあるから―、そんな理由で誰かを好きになる道理はない、ただ。


ただ


この店のドアを開く前までは、重く引きずるような心持が今は消えた。
くち数少なく傍らに座る、彼女との時間が、なんと居心地の良かった事か。


座りなおして近藤は、ずっと隣にいた妙に、今更ながら興味が湧いてきた。



背筋正しく、凛とソファに腰掛けて、落ち着いた物腰。



「お妙さんは…おいくつ?」

「ハタチですぅ」



まぁまぁ、まぁそーだよね、お約束だよね。

こーゆー店には多いんだよ、ハタチのコ。てか、ハタチしか雇ってないんじゃないかってぐらいだからね。



意識すればするほど言葉が見つからず、近藤は目の前に置かれた水割りのグラスをくちに運ぶと、まるで茶を飲むように、すすった。



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