近藤さんとお妙さん

□おとこが店にやってきた
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「新規一名様ご来店〜」



店のスタッフ、黒服の陽気な声に女の子達が入口に注目する。



「…なんか怖そうな人ね」

「帯刀してるじゃない、あたしダメ苦手」



同僚のささやきに、妙も顔をあげて客の様子を覗う。



着流しに羽織を着て、背の高い大柄な男性。


前髪を立ち上げ、顎髭を整えた顔立ちは清潔感があるが、眉根を寄せている気難しい表情には、確かに近寄りがたい雰囲気がある。





駅前のスナックすまいるは、やっと店内が賑やかになってきた時間だ。

いつもは得意客獲得に張り切る、先輩ホステス達が尻込みしているが、新人の妙は、それを黙って聞いている。


「お妙ちゃん、行って来てよ」

「お願い」


先輩ホステスに急かされて、妙は気楽に客へと向かった。

剣術道場を実家に持つ妙にしてみれば、別に取り立てるほどの事もない。

妙は男の前に立ち、笑顔で


「こちらへどうぞ」


と、奥のボックス席を手のひらで示すと


「あ、ども」


うつむいたまま軽く頭を下げる男は、意外にも穏やかな声で答えた。

それからゆっくりと腰から刀を鞘ごと引き抜き、右手で適当にぶら下げ、妙の後ろをのろのろとついてくる。


陰気な人だな、と妙は思う。

仕事でヘマでもしたのかしら。


ソファの前で立ちつくす男に、両手を差し出し、刀を手渡すよう促す。


「…あぁ、すんません」


本身の重さに腕が沈む。渡された刀を刀掛に納める。鞘には傷が付いているけれど、手入れがされていて美しい。


男はソファに静かに腰掛けると、大きなため息をついて、肩を落とした。



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