泉野パト小説

□ゲーム的小話
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ゲーム的小話 『バイト編』
舞台となるのは、真夜中の隊員室。
太田は当直の交代をすべく、廊下を急いでいた。
待っているであろう、野明と遊馬。
遅れたら、また文句の襲来が始まる。

…ところが。
隊員室の傍まできて、二人の怪しい話し声が聞こえた。

『こんな時間しか出来ないんだよな』
『そうだね』
「?」

一体、二人は何の話をしているのだろうか。
他愛の無いような気もする、だが…。
この時、太田の直感は“怪しさ”という答えしか弾き出していなかった。
気付かれぬよう、そっと気配を消して聞き耳を立てる。

『遊馬ぁ。やっぱりあたしには難しいよ、このバイト』
『何言っとる。たかがバイトじゃないか』
『だけどさぁ…』
『タイミングさえ掴めば、後はそのまま惰性でいけば良いんだよ』

(バイト…だと?)

公務員のアルバイトは、規則で禁止されている。
しかも、こんな時間にしか出来ないバイトなんて…

太田はふと、整備班がいつも隠し持っている“あの雑誌”の事を思い出した。

『やっぱりダメだよぅ。あたしには無理だって』
『おいおい…。こう言う細やかなのは、女の方が上手い筈だろ』
『そんな事言ったって。…あっ!』
『しょうがねーなぁ。俺が試してやる』
『ちょ、ちょっと…』

太田の脳裏には、この会話が益々破廉恥な方向へ聞こえてならなかった。
何かがブチリと音を立て、思い切りドアを開け放つ。
例え同僚とて、正義の前に一切の差別なし。

「貴様らぁっ!!先刻まで聞いてりゃ、随分と…!?」
「太田!遅いっつーの」
「太田さん、遅ーい!」

二人は携帯ゲーム機を片手に、太田を一瞥していた。
太田だけが、目が点になっている。
正義の突入は一気に勢力を落とし、ポカーンと立ち尽くすしかない。

「あ。太田さんにもやらせてみようよ、このバイト」
「ハハハ、案外出来たりしてな」
「そ、それだ!バイトって、貴様ら…」
「ん?」
「このゲームの事か?」

ゲームのタイトル:『バイトヘル2000』
(PSP)

■おしまい■
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