泉野パト小説

□任務的小話
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任務的小話 『らしくない』
この日の出動は、式典会場の警備。
立ち番交代で休憩中の野明は、招待客として来ていた陸上自衛隊の不破に会った。

「後藤隊長に聞きました。空挺部隊が招待されてたって」
「そうなのよ。こんな所に来る暇があったら、書類片付けて訓練の一つでもやりたかったんだけど」
「え。…そうなんですか?」

流石隊長なだけあって、相変わらず凄い人だ。
第一小隊の南雲も女性隊長だが、この人はまた違った雰囲気を持っている。

「泉さんも同じなんじゃない?“あの子”を、もっと鍛えたいんでしょ?」
「…エヘヘ」

あの子は野明の愛機を指している。

「でも、これも仕事ですから。…それに」
「それに?」

続きを話そうとして、かつて遊馬に「外部へ仕事の話を安易に喋るな」と言われたのを思い出した。
それで一瞬躊躇ったが、相手が不破なら口も堅かろうと考え直す。
この人なら、間違ってもマスコミなんかには漏らさないだろう。

「出動がなかったら、裏庭の草刈りやらされてましたから」
「草刈りまでやってるの?」
「はい。整備班の人達とか、手が空いてる人は皆やらなくちゃいけなくて」
「それじゃあ、まるで臨時の造園屋さんね」
「…やっぱり、可笑しいですよね。裏庭で釣りしたり野菜育てたり、って全然警察らしくないんですもん」

野明は苦笑いしている。

「そんな事ないわ。ウチも似たようなものよ」
「え?」

返事は予想を外れた。
不破はいたずらっぽく微笑んでいる。

「ウチの小隊、こないだはゴミ屋さんだったもの」
「ゴミ屋さん…ですか?」
「レイバーの操縦じゃなくて、収集車の運転なんだから。これじゃ、空挺の『く』の字も無いでしょ?」
「は、はい」
「警察も自衛隊も、“らしくない”仕事までやらされるのは同じみたいね」
「そうなんですね。こんな事、特車二課だけかと思ってました」
「しのぶにその事話したら、『自衛隊って一体何やってるの!?』って聞かれたわ」
「あははは」

二人は暫し笑い合った。


二課棟へ帰還後、野明はその事をこっそりと遊馬に話した。

「はぁ!?…自衛隊って一体、何やってんだ?」

■おしまい■
ゴミ屋:元自衛官の知人から聞いた実話
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