戦乱の世

□大谷の屋敷から
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「今、夕食が運ばれてきますから。少しお待ちください」
「あぁ」
結局屋敷に泊まることになった三成は諦めてもてなされることにした。
「なんだか、逆に悪いことしたな。
気を使わせた…」
「今まではよく互いの屋敷に泊まっていたではありませんか」
「それなら次は俺の屋敷に泊まりにこい」
「ええ…そうしましょう」
夕飯が運ばれてきた。
懐かしい話をしながら食べる夕食はいつもよりおいしかった。

「では。先にお風呂をどうぞ」
「そうさせてもらう」
風呂に向かう三成の背中を見送り、
さてと立ち上がり吉継は呟いた。
「何をしましょうか…」

何をするか悩んで結局布団をしくことにした。
布団を敷いていると、布団が一つしかないことに気がついた。
「そういえば…」
この間、客間の布団を久しぶりに干したとき猫が入ってきて、
滅茶苦茶にしてしまったので新しく都合していたのだ。
「そういえば…まだ届いていなかったのですね」

「吉継?風呂には入らないのか?」
「今入って来ますが…」
布団をどうするか考えていると三成が顔を覗き込んできた。
「どうした?体調が悪いのか?」
「いえ…そういうわけではないです…」
「?」
「私は風呂に入ってきますね」

最悪の場合自分が畳の上で寝ようと決め風呂に向かった。

「では。おやすみなさい」
自分の部屋で畳で寝るかと立ち上がると
「吉継。何か隠し事をしているだろう」
腕をつかみ引き止めて少し怒った顔で真っ直ぐに目を見てくる。
「隠し事…そんなに大きなことではないですが…
 隠すのは無理でしょう…ただこの屋敷には布団が一枚しかありません」
「そんなことか。どうせお前は畳で寝ようなどと考えていたのだろう」
「仕方ありません。客人に失礼な真似はできません」
再度部屋を出て行こうと思ったがまた呼び止められ、
「なら、この屋敷を出て行くまでだ。お前に寒い思いなどさせるものか」
そういうと立ち上がり出て行こうとする三成。
さすがにもう時間も遅い。帰らせるわけにはいかないが、布団が1つしかないのだから仕方がない。
「参りましたよ。三成」

「少し狭くはありませんか?」
「ならもう少しこちらに寄ればいい」
二人とも背中合わせで狭い布団に寝る。
互いに真っ赤な顔を見られないように。

(大谷の屋敷から二人の寝息)

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