企画物

□バレンタイン企画
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そして、2月14日。バレンタインデーだ。
和人は朝からにこにこしていたが、気持ちの準備が出来ず、何も触れないまま家を出てきてしまった。
「さて、やっと帰れるか・・・」
その日の仕事を終わらせ、帰り支度を始めると、一人の女社員に声を掛けられた。
「春名さん、あの、これ・・・」
女の手には小さい箱。
「バレンタインなので・・・」 
あぁ、チョコレートか。
はにかみ笑いを浮かべるその女から箱を受け取る。
すると、また別の男社員のところへ行って同じような箱を渡していた。
よかった、義理チョコみたいだ。
だが、和人に見つかったら何を言われるか。
まぁ、和人はモテるらしいから、本命チョコを抱えて帰ってくることだろう。
などと考えていると、すぐに家についてしまう。
これからチョコを渡さなければいけないと考えると、いつもの扉が重く感じる。
今日もどうせ、自分の部屋に帰らずに俺の部屋に転がり込んでいるんだろう。
「はぁ、行くか・・・。ただいま」
照れを押し殺して扉を開く。と、玄関に和人が倒れてていた。
「和人!?」
「あ、真さん・・・助けてください・・・」
和人は大量の箱に埋もれていた。バレンタインチョコの箱のようだ。
「学校でもらったんですけど、こんなに食べきれないから、真さんと食べようと思って・・・」
二人で大量のチョコを運ぶ。軽く段ボール2箱分くらいだ。まったく、どんなモテ方をしてるんだ・・・。
チョコの多さに呆れていると、後ろから感じ慣れた温もりを感じる。
「真さん、そんなチョコいいから」
後ろからぎゅっと抱きしめられると、年上の威厳も忘れ和人に身を委ねたくなってしまう。
スーツのままベッドに連れていかれると、いつものように優しく押し倒される。
「痛っ、何かあるぞ」
枕の下に手を入れると、綺麗に包まれた小さい箱があった。
「なんだ、これ」
「あ、真さん・・・はぁ、見つかっちゃった」
溜息を吐いて箱を取り上げると、和人は結ばれた紐を解きはじめた。
「真さんがデレデレになった時に出そうと思ってたのに・・・」
「これ・・・」
箱から出てきたのはハート型の小さなチョコレート。そして、シンプルなデザインのペアリングだった。
「おもちゃなんだけどね。本物は、真さんに釣り合うような一人前の男になったらプレゼントするから」
薬指に指輪を入れられる。見事にぴったりだった。
「和人・・・ありがとう。あ、俺も」
そう言ってチョコを取り出したはいいが、こんなにすごい物を貰ったあとに出すのは少し気が引ける。
「・・・やっぱり、買いなおしてくる・・・あ」
再び鞄に入れようとしたところで、和人に取られてしまった。
「わ、ありがとう!俺、このチョコすっごい好きなんだ」
和人は、適当に買ってきたチョコを喜んで受け取ってくれる。
「お前がこんなもの用意してるなんて思ってなかったから・・・そんなものでごめんな」
「ううん、真さんが買ってきてくれたってだけですごく嬉しいよ」
チョコを大事そうに鞄にしまい、抱き着いてくる。
「・・・あとは、真さんが欲しいな」
耳元でそう囁かれると、理性なんて吹き飛んで和人にされるがままになってしまう。
いい加減、主導権を握られるのもどうにかしないとな・・・。
まぁ、こんなのもいいだろう。

こうして、俺たちのバレンタインは過ぎていった。
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