ブラコン短編

□その瞳に飲み込まれて番外編A
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「へぇ神無ー。お前見た目によらず、スキーは得意なのか?」

「よく言われます。……多分出来たので、苦手ではない、らしいです」


リフトに隣り合わせで乗った上総が、ゴーグルについた雪を拭きながら素っ気なくそう答えた。

毎年恒例だった家族でのスキーも、今年の参加者は俺と後ろのリフトに乗った双子と、そいつらにはさまれてる絵麻。そして隣に乗るこいつと、前方のリフトに乗っている侑介とかな兄だけだった。

可愛くない。

ツンとした態度と顔付き。絵麻と瓜二つな顔ではあるが、性別と性格のせいで全くもって正反対である。

俺達に対して、は。


「神無、お前梓とは…」

「棗さん、それ以上詮索するなら梓さんに言い付けますよ………。」

「…」



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「神無が…いない!?」

「すまねぇ、俺が少し目を離した隙に……」

「神無が…遭難……」


どうしたんだ?
絵麻が自分の身体を抱き締めながら震えだした。

明らかに様子がおかしいことは誰から見ても一目瞭然だった。


「絵麻?」

「神無は昔……小さい頃に……パパを追い掛けて山で遭難…したんです。だから……」


きっとトラウマが…と、か細い声で続きを紡ぐ前に身体が走り出していた。

少し遅れて梓も走り出したのが見えたから多分椿も着いてきてるだろう。


「梓ぁー!!待ってよ梓!!」

「何でお前らまで……」

「僕は純粋に心配だから。神無は僕に似て素直じゃないところもあるし……」


そう言い放った梓の顔は、確かに心配している様ではあったが、俺達とはまた少し違う観点からの感情に見えた。



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「侑介ーっ」


おかしい。さっきまで隣を並んで滑っていたのに侑介の姿が見当たらない。それどころか、他の兄弟やスキー客も見当たらなかった。


「コースアウト…したかな?」


そう言えば調子にのって侑介と一緒に随分上まで来てしまった。

辺りは見えないくらい吹雪で、最早方向感覚も危うい。


「侑介っ!!いないのか?」


試しに叫んではみたものの人の気配すらない。いや、この状況なら侑介はいない方がよかっただろう……

一人だとわかった瞬間、どうしてか安心した。
道連れにしないで済む。
でも出来れば侑介が皆とちゃんと合流出来たのかだけでも……

あぁ、それと……


「梓、さん……」


梓さんにいいたいことあったんだっけ。昔の自分に勝手に重ねて無駄に気にかけるのはやめてとか、髪の色が明るすぎるとか母親かって位うるさい……、

それから……


それから……っ


「神無!!!!」

「梓……さん?」


と椿さんと棗さん。
あぁ……よかったぁ。

そこで俺は意識を手放した。



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