ブラコン短編

□棗短編
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「椿さんは、妹の様な人が好きなのでしょうか?」

「え」


まるで絵麻を取り合う様に繰り広げられる目の前の双子と絵麻のやり取り。
……特に椿なんかは露骨にアピールしている。
本人は到って平静を装ってるつもりかもしれないが、端から見たら梓も同じだ。


「せっかく海に来たのに、砂浜で縮こまってる理由はそれか」

「椿さんが珍しく私を誘ってくれて……二人で海なのかな?と思ったら……。わかってました。絵麻を誘う口実だって」


違う、と言ってやりたかった。
だが、なんとなく口を開けないまま隣でかき氷を自棄気味で貪り食う妹を眺めるしか出来なかった。

…まぁ、大筋は間違っていない。間違ってはいないが、根本的な所が間違っている。


*


最初にこの話しを切り出したのは俺だ。
だが、あいつの気持ちを知っている椿はそんな思わせ振りみたいなことはしたくないと、当初は断ったのだ。

そこで奥の手を使った。


「男しかいない所に年頃の女がのこのこ着いて来るわけないだろう。あいつらは仲がいいからな」

「そっか!!俺考えてなかった。じゃぁ早速あの子のこと誘ってくる!」



*



その後に嬉しそうな顔をしながら俺にメールを寄越したあいつ。
そして、旅行当日の落胆。

全部、俺のせいだ。


「買い出し行かないか?辛いんだろ、見てるの」


そうさせてしまった自分への罪悪感と罪滅ぼし。少しでもあいつにこの旅行を楽しんで欲しかった。

いや、そうじゃない。少しでも……あいつを振り向かせたかった。


「…棗さんのこと好きになればよかった…」

「は?」

「こんなに優しいし、気遣ってくれるし……」

「今からでも、遅くはないんじゃないか?」

「……え?」



今度は彼女が驚く番だった。



「俺お前に優しいのも、こうやって連れ出すのも……そう言うことだ」

「えっと……あ、あの…その……」


頬を赤く染めなが歩みを止めてしまった。慣れていないのだろう。
そんなことがいちいち可愛くみえて……重症だと自分でも感じた。


「ほら、置いて行くぞ」

「あ、待ってください!!!!」




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