ブラコン短編
□椿短編
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以前、声優雑誌の特集の撮影で行ったスタジオで擦れ違ったことがあった。
話している印象からふんわりとした雰囲気の子だと思っていたのだけれど、髪型や服装によってクールに決めたり、はたまたボーイッシュだったり……。さすがプロのモデルだな、と思っていたら実は今日偶然居合わせたからモデル体験をしている一般の女の子らしい。
だから今思えば……その時にはもう惹かれてたのかなって……
だから、だから今の状況は非常に面白くない。
「なぁ……あのよぉ……。その……」
「おねぇちゃん!!あそぼ?」
「妹ちゃん暇?だったら俺とデートしない?」
明らかに気があるのが見え見えの侑介。
子供の特権を振りかざす弥。
堂々と妹をナンパするかな兄。
「ねぇ、三人ともさぁー……」
「あの、すみません……私、椿さんから先に誘われているんです」
「え、つばちゃんそうなの?だったら先に言ってよ。人のモノに手を出す趣味はないからさ」
「つば兄かよ……」
「僕は行っちゃダメなの?」
「わたー?そう言う野暮なことはしないんだぞ?」
「そう言うんじゃありませんっ。右京さんに夕飯の買い物を、頼まれていたので…それで椿さんが荷物持ちをしてくださるので……」
と、照れ臭そうに言った。でもはっきりとそう言うんじゃない。と告げたのだ。
同情するかのように眉を下げながらこちらを眺めたかな兄から目を反らした。
今はそれでいい。
今は……。
そっと、あたかもそれが当たり前とでも言うように手を握って見せた。
「じゃぁ、いっこっか☆」
「…っ……え、あ…はい。あの……」
後ろで苦笑を浮かべるかな兄や、「なっ…」とか言って赤面する侑介。弥はまたもや空気の読めるかな兄に止められてるみたいだった。
これで少しは対象として見てくれろだろうか?
今後の展開を想像しながらエレベーターへ向かったのだった。
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