短編集
□Trick or Treat
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「 Trick or Treat」
「…見て分からないのか?俺は今忙しいんだが」
地下研究室の扉を開けながらハロウィーン定番の言葉を言うと、きっぱりとそう言われたのだ。
折角コスプレまでしてきた(正確にはさせられた、だけど)と言うのに、こちらを見向きもせず終いには、「忙しい」……ですと。
「少しくらい遊んでくれたっていいのに…」
お菓子の籠を両手でぎゅっと握り締めて、頬を膨らませながら言った。それに、いつもは着ない可愛らしい衣装を纏っているのだ。少しくらい見てくれたって……。
「……」
ジーっと効果音が付きそうな程視線を送ってもジョーリィは態度を変えることなく実験に没頭していた。
「もういい……実験なんて失敗しちゃえ……きゃっ!!」
捨て台詞を吐いて部屋を出ようとしたところ、腕を強く引かれそのままジョーリィの胸に収まった。
「残念ながら菓子の持ち合わせはなくてね。……どんな悪戯で楽しませてくれるのかな?」
「……っ///」
余裕の笑みを浮かべるジョーリィ。自分の方が優位に立っている筈なのに……
「……キスで許して、あげる……///」
それは悪戯にしてはとても可愛らしい。しかし、次第に深まっていくキスはとても官能的で、お菓子なんかより全然甘い。
………これが私にとってのお菓子。
---end---
→後書き