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□酷悪の嘘
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「ジュノ…」

「ぁ、クン兄さん…」

窓の外を眺めていたジュノが作り笑いで振り返る。

こんな風に笑うようになったのは、いつ頃からだったか…。

「聞いて!!今日はね、ジュンス兄さんとね、ウヨンとチャンソンが来たんだ!!」

「うん。」

ベッドのすぐ横にある椅子に腰掛けた。

点滴に繋がれたジュノ。

「テギョン兄さんはね、仕事だって…ジュンス兄さんが言ってた。」

「うん。」

無理に明るく話すジュノを分かっていながらも、どうすることもできない。

適度についていた肉が無くなり、線が細くなったジュノを見るたび、自分の無力さを実感する。

「ね、後どれくらいで退院できんの?みんな教えてくれないんだ…。」

「……もう少しだけだよ…。ちゃんと治してから復帰だな…。」

……僕は…嘘つきだ…。

こんな時だけ、心から笑うなんて…。

ジュノは酷だね…。

「やった…すぐ治すから!!」

「うん。早く治しな?」

ジュノの病気は治らない。

期待だけ持たせて…。

僕は、大嘘つきだ。

「ね、久し振りにさ…キスしてよ…」

たとえ、99%無理だと言われていても、僕は残った1%を信じたいんだ。

奇跡はあるんだって、信じたいんだ。

「いいよ…」

ジュノの求めるようなキスに応えて、激しいキスをする。

きっと、ジュノも分かってるんだね…。

自分が、もう永くないって。

たとえ、それが無意識でも…。

「……今日は、泊まっていくよ…」

少しでも長くジュノといたい。

神様、どうか…僕達から………僕から、ジュノを奪わないで…!!

「兄さん、明日早いんでしょ?ウヨンから聞いたよ…」

また作り笑いに戻ったジュノをギュッと抱き締めた。

今日は、離れるのが無性に嫌だった。

「帰りなよ…それで、明日みんなで来てよ…ね?」

「……少し、遅くなるよ…?」

構わない、と言って笑うジュノをさらに強く抱き締めた。

「痛いって…」

「うん。ごめん…明日、みんなで来るから…待ってて…」

椅子に座り直してジュノの髪を撫でる。

長くなった髪を指に絡ませれば、くすぐったいとジュノが笑った。

「ぁ、面会時間、過ぎてますよ?」

「ぁ、すいません。すぐに帰りますから…。それじゃ、ジュノ…」

通り掛かった看護師に返事をして、立ち上がる。

「明日来るから…」

ジュノの唇に軽くキスを落として、離れる。

名残惜しく思いながらもジュノの髪から手を離した。

「また、明日ね…」

僕に手を振るジュノに、手を振り返して病室を出た。

人通りのない道に出れば、空気が一段と冷え込んだ気がした。

「冷えるな…」

ケータイを取り出し、時間を確認した。

「午後7時30分…」

そろそろテギョンの仕事が終わる。

……迎えに行こうか…。

ポケットに両手を突っ込んで、撮影の現場に向かった。

着けば、ちょうど終わったとこらしいテギョンが挨拶をしていた。

「ぉ、クン!!」

「近くまで来たからね…帰ろうか…」

挨拶を終えたテギョンを隣に、町を歩く。

「………ジュノ、どうだった?」

「……また、痩せた…」

窓の外を眺めていたジュノの寂しそうな後ろ姿が頭から離れない。

「明日…久し振りにメンバー揃って行こうよ…」

「あぁ…そうだな…」

その後は他愛もない会話をしながら宿舎に戻った。

みんなが寝静まった頃、ジュノの容態が急変したと連絡が入ることを、僕はまだ知るよしもなかった。



→後書き(さくらんぼさんへ)
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