裏
□無意識の
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「ーはぁ」
俺ー日向棗は大きなため息をついた。
ちらりと横を見れば、
俺の腕に手をまわして頭をもたれさせ…
人の腕を抱き枕みたいに使う蜜柑が目に入る。
当の本人は安らかな、
気持ち良さそうな寝息をたてているが。
小さいとはいっても10年後、
さすがに少しは成長したらしい胸が、
無遠慮に、突然、腕に押しつけられたりする。
その腕の感覚を考えないようにすれば、
次は吐息がかかるのが気になり。
それを考えないようにすれば、
次は寝言までもが気になってくる。
時折、
「棗」と、
囁くように告げられるその名前が聞こえるたびに、
ドキッとする自分が鬱陶しい。
イライラしかけて蜜柑を見てみると、
無造作な長い髪が気にかかる。
あのときの約束より5年経っているけれど、
下ろした蜜柑はやはり綺麗だった。
手にあたる髪がくすぐったい。
"蜜柑"という存在が、
俺をいつも煽ってくる。
今は、特に。
「…無意識の煽りが1番タチわりぃんだよ」
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