夢 短

□愛を
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流架につれられて来たのは、


流架がいつも動物たちとひっそりたわむれてる、動物小屋。



着いてやっと手を離される。



「お前さ、
 
 なんで他の男としゃべんなって言ったかわかってないだろ?」


「わかんない」

「…やっぱり」


はぁ。とため息をついて、

私の手を両手で包み込む。


さっきまでとは違う、

その優しい感じは、

なんだかいつもの流架みたい。



「他の男に触られたくない。

 他の男としゃべってるの見ると、

 …自分が自分じゃなくなる気がする」


「うん」


「名無しさんを盗られる気がしてっ…

 そんなの、嫌で嫌で仕方がない…」


包んだ両手を見ながら、
一つ一つ言葉を紡ぐ流架の声は、

だんだんといつもの声に戻っていて。



「他の男よりも、
 俺のほうが名無しさんを知ってるんだ、って、

 …ヤキモチ妬く」



流架、ちょっと声震えてる。



「ずっと、思ってたんだ。

 名無しさんには棗がお似合いで、
 俺は棗には敵わないって。

 だから隠すことに決めたんだ。

 だけど…」



震えは大きくなって、
今では握られた手にも伝わるくらい。



「今日、性格が変わって、改めて実感した。

 やっぱり渡したくないんだ、誰にも。

 名無しさんは俺だけの人でいてほしい」



ゆっくり顔をあげて、

震えのなくなった澄んだ声で、流架は私に、



「好き」



私に、



「名無しさんが、好き。…大好き。

 ずっと、ずっと、好きだった…」



私に、愛を囁くの。














今までで一番素敵な笑顔で、

もう一度愛を囁いて。


離さないで。


ちゃんと捕まえていて。



逃げないように、

また、愛を囁いて。





END



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