夢 短

□愛を
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「………」


教室の中心で、取り巻きに囲まれて、
机の上に組んだ足を乗っけてる。

それは、いつもの棗じゃなくて。


「…うるせぇよ」



流架なのでありました。






【愛を】






「これは…何でこうなってるの?(汗)」



登校したばかりで何がなんだかわかんない。


流架を見たままぼけっとしていたら、

「おはよ、名無しさんちゃん!」

朝からまぶしいくらいの笑顔で蜜柑がしゃべかりかけてきた。


「おはよ。

 あの…なんで流架はあんなに…?」


「あー…。

 蛍が薬の実験台にしたんよ(汗)
 
 あ、体に害はないって蛍言ってたで」



…いや、そういう問題じゃなくて。


流架と棗は私が学園に入ってからの幼馴染だけど、
棗はともかく、流架があんななのは初めて見る。


蜜柑がいうには
"裏の性格引き出しクン"らしい。

普段とは逆の性格になる薬。


…おっかない。



「あ、名無しさんちゃん、昨日ノートありがとう」


あんな流架には慣れそうになくて、
一人席に座ってたら委員長がしゃべりかけてきた。

…そういえば、
昨日休んだ委員長にノート貸したんだっけ。


「いいよー全然。

 ちゃんと読めたかな?」

「うん。綺麗な字ですごいわかりやすかったよ」

「ほんと?
 昨日眠かったから、字がミミズみたいになっちゃって(笑)
 
 読めてよかった」

「ほんとに助かったよ〜」



「…おい」



委員長と楽しく話してたら、ふいに影がかかって。


不機嫌オーラ満開のその声は、
普段からは考えられないくらい低い声の流架。


「る、るか…?」

「流架くんどうしたの…?」


二人して怖すぎる流架におびえる。


そしたら流架は委員長をちらっと一瞥して、


「なに男としゃべってんの?

 お前、わかってない」



…お前、なんて言われたことないのに。



「委員長。こいつとしゃべんのやめて」

「は、はい…。
 
 ごめんね流架くん…」



びびる委員長を追い払う流架。

…普段ならこんなことも絶対しない。



「…名無しさん」

「…なに?」



いつもより据わってる流架の目。

優しさより、
その目を支配してるのは、




きっと独占欲。




その目は、じっと見つめると、



飲み込まれてしまうくらい、




「いくぞ」







深い。









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