夢 短
□甘やかし
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「名無しさんちゃん?」
「………」
「もうそろそろ戻ろうか、授業始まるし。
何より君が大変そうだし」
「………」
「…もう、仕方ないなぁ」
いつもならなんだかんだ我慢するけど。
今日はしてあげない。
いつもしないからって
安心して無視してるその背中に近づいて、
後ろから乗っかるようにして、
名無しさんちゃんの頭に顎を乗せる。
「せんせ…っ!!」
「なーに?
…誰も来ないよ」
そう、名無しさんちゃんの耳元で囁いてやれば、
君はびくっと肩を震わせて、
真っ赤な顔でうなずくんだ。
…あ、可愛い。
「で、でも、いつ誰が来てもおかしくないし…っ///」
「うん、そうだね」
「見つかったら、先生タダじゃすまないし///」
「うん」
「だから…だから、離して?」
「離さない」
必死に言葉を選んで、紡ぐ君の言葉を一蹴して。
「え?」って驚いた顔をしてる君にニコリと笑って、
「もし見つかったら、こーゆう関係ですって言えばいいじゃない?」
「でもっ…」
「名無しさんちゃんは、いや?」
「嫌じゃっ…!」
「でしょ?
僕も名無しさんとこーするの嫌じゃないよ?
だから、もし見られても大丈夫。
そしたら、『名無しさんは俺の』って言ってあげる」
意識的に名無しさんちゃんから名無しさんに呼び方をかえた。
…本気って伝わるように。
「…なんか、今日の先生、へん…///」
まだ僕の腕につかまりながらも、
僕の腕をつかんで、離さない君。
僕の心も、体も、
全部つかんで離さないんだから。
困っちゃうなぁ。
もうすぐ始業の時間だけど、今は帰りたくない。
…ちょっとくらい、いいよね。
END
→あとがき