夢 短

□甘やかし
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ズズズズズー…




「はぁ…」


「…なに、名無しさんちゃん、風邪?」



昼休み、
今日は天気がいいからって外で食べる僕の隣にはー

君がいて。


いてくれるのは嬉しいんだけど、

隣でにぎやかな音をたてられ続けるのは聞いていてしんどいなぁ。



「…ううん、花粉症ー」


完全に鼻づまりさんの声は、
いつもの透き通った声ではなく。


「そっか…。

 そんなにひどいなら着いてこなくていいのに」


「む」



そう、彼女のことを気遣って言うんだけど、
名無しさんちゃんは邪魔だと言われたと勘違いして頬を膨らませてる。


花粉にやられた、
少し赤く、涙のたまった瞳で。



…そんなに僕をイジめたいのかなー。



なんて場違いなことを考えてたんだけど、




「も、いいっ!!」



そんなことを知る由もない君は本気だと思ったの?

そのまま拗ねてそっぽをむいてしまって。



相変わらず鼻はぐずぐず言わせてるし、

涙をふこうと袖を引っ張ってるし、

小さく「くしゅん」と言っている背中は小さく震えて。



まるで泣いてるみたい。


君は甘えるのがへたくそだから。


きっとそっぽを向いてるのは、
僕が折れて謝って、君が許して。






僕の"甘やかし"を期待してるんでしょ?







相変わらずそっぽをむいたままの君をちらっと盗み見ると、

君も僕を盗み見しているのがわかって。



「そんなにかまってほしいなら素直においで?」


…なんて、かわいすぎる反応が返ってくるから言えない。



僕の理性がもたないから。








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