小説
□お返し
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「蜜柑、好きだ。
お前だけを、ずっと…」
「よ、よーそんな恥ずかしいこと…///」
「当たり前だろ?
蜜柑への気持ちが本物だから、伝えたいから言うんだよ」
同い年やのに、棗はウチよりも何歳も大人で。
顔も真っ赤にせずに、
ひっかかることもなく、
平然と、当たり前かのようにさらっと言ってのける。
棗がウチを想ってくれてるくらい、
ウチも棗を想ってるのに。
口下手なウチは、いつもしっかり伝えられへん。
恥ずかしすぎて、自分からも言えへん。
いつもいつも、棗に言わせてる。
棗に甘えてばっかりで。
「…蜜柑?」
でも、そんなウチをわかって、許してくれるから。
ウチはこんなにも甘えんぼになってしまってんで?
「どうした?」
黙りこくってるウチを、心配そうに見てくる棗。
今だけ…今夜だけ、
いつものお返しをしたい。
「…みか"ちゅっ"………//」
下から覗きこんできた棗の唇に向かって、
ウチの顔を下げる。
必然的に棗の唇と、ウチの唇が触れ合う。
ただそれだけ。
一瞬だけ、触れて。
すぐに顔を上げて棗を見たら、
目を見開いたまま固まってて。
「…棗?」
呼んだらすぐに固まってたんはなくなったけど。
ちょっと、ほんのちょっとだけ、
棗の頬が赤い気がする。
「…いつもいつも棗からやから、お返しっ」
いまさらやけど恥ずかしくなってきて、
なるべく明るくそう告げる。
「…そうか」
棗は"にやっ"っと笑って、
ウチを"ぎゅっ"っと抱きしめる。
「ありがと、蜜柑」
ウチも"ぎゅっ"ってお返しする。
「いつもありがとう、棗」
抱きしめた棗からただよう、棗の匂い。
ウチを幸せと安心でいっぱいに満たしてくれる。
これからもずっと、棗に甘えてばっかりやと思うけど。
これからも優しく許してくれる棗でいてな?
END
→あとがき