小説

□知ってる
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そんな危ないことを考えているとは思いもしない蜜柑は、
涙のたまった目で棗を睨んでいる。


「(ぼそっ)…可愛いな」

「え?」

「…なんでもねぇ。早く泣き止め」


そう言って、
棗は蜜柑の涙を手でぬぐってやる。


「だって…いだがっだ(泣)」


涙をぬぐった棗の優しさに、
また痛みを思いだしたのだろうか…

蜜柑は再び泣き始める。


「お前な…いつまで泣いてんだ」

「顔面ぶつけて真っ赤やし…痛いし(泣)」


これ以上ほっとくと、
スカートが水分を吸えなくなりそうだった。


「(ぺろっ)」

「?!」

「…ほら、泣き止んだ」


スカートと己を案じた棗は蜜柑を泣き止ませるために、
今度は舌で涙を舐めてやった。

案の定、びっくりした蜜柑は泣き止む。


「あ、あ、あんた…何して…///」

「何って…舐めただけだけど」

「ぅ///」

「顔真っ赤」

「そっ、それは棗がっ///」

「…なに?」

「っ///…何でもないっ!!」


蜜柑は棗の手からノートをひったくり、
顔を真っ赤にしたまま大股で教室を出ようとする。

…そんな可愛い蜜柑を、
やすやす棗が逃がすハズもないのだが。


「蜜柑」


"名前を呼ぶだけで、
ピタリと足を止める蜜柑が愛しい"

そんなことを思いながら近づいて、
ゆっくり蜜柑に腕をまわし、後ろから抱きしめる。


「…棗///」

「お前、そんな顔で煽ってんじゃねぇよ」

「煽っ…!!」


"煽る"だなんて言葉にびっくりしている蜜柑の耳元に、
とびきりの甘い声色で。


「…お前を、食べたくなるだろ?」


最上級の愛と、エロさをこめて。

固まって動かない蜜柑を振り向かせ、
正面から顔を覗き込んでやる。


「…棗のアホっ///」

「…知ってる」

「棗の変態っ!!///」

「知ってる」


知ってる、と返事をしながら、
蜜柑を抱きしめる力を強くする。


「棗…………すき///」

「!!」


突然の不意打ちに、心臓がはねる。

"これだからコイツは最高なんだ"
と、改めて実感して。


「…知ってる」

「俺も…」

「蜜柑、好きだ」


"ちゅっ"


思いを詰めたその一言と一緒に、
頬にキスも添えて。

口だけじゃないんだと、
蜜柑にしっかり伝わるように。


今まで垂れていた蜜柑の腕が、
棗の背中にまわされる。

棗の耳に、
優しく甘く響きわたる。



「…知ってるよ」





END




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