小説

□知ってる
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ガラガラガラ

扉を開け中を覗くとー


「あっ……棗」


電気もついていない暗い教室の窓際に、
腰かけて外を見ているシルエットがひとつ。


「………」


棗は目だけで声の主を確認する。

扉があいた音には反応しなかったくせに、
蜜柑の呼びかけにはかすかに反応をみせた。


「あんた、こんなとこで何してんの?」

「…別に」


"外で遊んでいる蜜柑を見かけそれを眺めてたら、
いつの間にかいなくなっていた"
…なんて、口が裂けても言えない。


「相変わらず無愛想やな、あんたは」

「…うるせーな。何の用だよ」

「それこそあんたに関係ないわ!!」

「さっさと宿題もって帰れよ」

「……知ってるんやんか(汗)」


見事に言い当てた棗に言い返す言葉がなくなってしまい、
しぶしぶ切り上げて自分の机に向かう蜜柑。

机の中をごそごそあさってー


「…あれ?なんでないんやろ?」


確かに帰る前に机の中に入れたのに、
宿題のノートだけが見つからない。


「なぁ、棗、あんた何か知っ……」


顔をあげ棗に視線を向けると、
…棗が何かを読んでいるのが目に入る。


「それウチのノート!!」

「…汚ねぇ字」

「うっ…(←図星)」

「それに、似顔絵かくならもっと上手くかけよ」

「なっ///誰が棗をかいたって…」

「いくら下手でも目みりゃわかる。
ご丁寧に赤く塗ってくれてるしなぁ??」


棗の勝ち誇ったような目が向けられる。

確かにその似顔絵は棗をかいたもので、
お世辞にも上手いとは言いかねるが…

本人にみられるほど恥ずかしいものはない。


「…もうええから返して!!///」


見られた恥ずかしさからか、
少し顔を赤らめた蜜柑が棗に近寄る。


「…誰が返すかバーカ」

「もー返してって!!」

「…あ、さくらんぼ」

「ぎゃーっ!!パンツ見るなぁボケ!!」

「お前が見せてんだろーが」

「見せてないわ!!はよ返し…う゛」

「あ」


あまりに激しい乱闘(?)の末、
華麗に蜜柑の攻撃をよけた棗に対応できず、
そのまま蜜柑は窓に突っ込み、顔面をぶつけた。

一時終戦らしい。

ぶつけた顔を押さえたままうつむき、
なかなか顔を上げない蜜柑に少々焦ってきた棗。


「おい、大丈夫か」

「………」

「おい、蜜柑」

「……ぃ」

「みか「痛いんじゃボケーッ!!(泣)」


棗を遮り、
大粒の涙を流しながら顔を上げ、棗をみつめる。


「…っ」


"コイツ…俺を誘ってるのか?"

とか、小学生らしからぬことを思う棗だが、
あまりに泣き顔が可愛いものだから…

"甘やかしてやろう"とも思った。
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