【RPG風お題】

06.精霊との契約



「やりましたねクラースさん!」
「おめでとうございます!」

うっすらと緑色の光を帯びたオパールの指輪を愛しげに撫ぜているクラースに、クレスとミントがまるで自分のことのように喜ぶ。
ローンヴァレイにて漏れ出ていた瘴気を取り除き、シルフの暴走を収めたクレス達一行。
そのかいあってかシルフはすんなりとクラースの力を認め、契約を受諾したのだ。

「ああ……君達のおかげだ。本当に助かった。礼を言わせてくれ」

とうとう研究結果を実証できたという喜びに、クラースの声も弾んでいる。
クレスとミントは顔を見合わせにっこりとほほ笑んだ。

「これで晴れてアイテム係から卒業できますね!」
「!! ア、アイテム係言うな……!」
「やっと戦力になってくれるんですねクラースさん!」
「やっとって……」

精霊と契約できた喜びも束の間、ミントの聖母のような笑みから繰り出された思いもしない言葉に打ちのめされるクラースだったが、さらに続けてクレスが追い打ちをかける。
この二人のタチが悪いのは、これが決して悪意から出た発言ではないことであろう。

「もう僕一人で攻撃にまわらないでもいいんですよね! やったー!」
「ま、まるで今まで私が戦力外だったみたいな言い方じゃないか!」
「え? 僕なにか変なこと言いました?」

しかしここまでくるとクレスにはさすがに若干の思うところはあるのかもしれない。
なにせ今までクレスはほぼ一人で魔物と戦っていたのだ。
ピヨピヨのくちばしが後頭部に刺さったり、ハーピィの爪が眉間に刺さったり、散々痛い思いもした。
そんなクレスが多少意地悪をしたって罰はあたらないだろう。

「……確かに私は君と比べれば非力かもしれないが、」
「ミントのチャージも使いどころが出てくるかもしれないよ」
「そうですね、嬉しいです!」
「無視か!?」
「それとクラースさんの魔術書もこれ以上べこべこにならないですみますね!」
「それは……そうだな。まあもうこれは本としては使えないだろうがな……」

ボロボロな上にところどころ返り血で赤茶け、ネクロノミコンとしてはこの上なく箔がついてしまった魔術書を、クラースは悲しげに一撫でした。
どこからどう見ても呪いの書物である。

「あ、クラースさん、もしかして黒魔術なら使えるんじゃないですか?」
「私の専攻は召喚術だぁ!!」

そよそよと穏やかな風が吹くローンヴァレイに、サモナーに成り立ての男の叫びが虚しくこだました。





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お題提供元:もこもこ探偵事務所



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