襲いかかってきた魔物の群れをやっつけたところで、お昼ついでに休憩することにした。
軽くキャンプを張ったところのちょうど近くに川があって、エルがはしゃぎながら水浴びに行って、それをアンジュが追いかけて行って。
で、さらにそれをスパーダがにやにやしながら追いかけて、慌ててルカもその後を追って。
自然とキャンプにはあたしとリカルドの二人が残ることになって(コーダの姿も見えないけど、きっとまた食べ物でも探しに行ったんだわ)あたしは木陰で銃の手入れをするリカルドをなんとなしに眺めていた。

「暇ならお前も手入れをしたらどうだ」
「やーよ」

ご飯食べたあとすぐに銃の手入れをする気にはなれない。
かといって、泳ぎに行く元気もあんまり無かった。さっきの戦闘でちょっと天術を使いすぎたかもしれない。
だからぼーっとリカルドが銃を分解して磨いて組み立てて、を繰り返しているのを見ている。
あたしの視線が気になるのか、リカルドはちょっとこっちを見て溜息をついた。

「やらんのなら、貸せ。ついでにやってやる」
「あんたがやりたいだけじゃなくて?」
「いいから貸せ」
「はい、ありがと」

あたしの銃はすぐにバラバラにされて、綺麗に磨かれ始めた。
つくづく、銃が好きなやつだなあと思う。
リカルドに手入れを任せた後は銃の使い勝手が全然違うし、好きなだけじゃなくて本当に銃のことをわかってるんだなあ、とか。
そんなことを考えていたら、あたしはリカルドの白い頬に赤い線がうっすらとついているのを見つけてしまった。

「やだ、あんたほっぺた切ってるわよ」

さっきの戦闘の時かしら。ルカやスパーダはともかく、リカルドがへまをするなんて珍しい。
リカルドは仏頂面で、ちゃっちゃかあたしの二丁目の銃を分解し始めた。

「……こういう時だけ無駄に目敏いな、お前は」
「無駄にってなによ無駄にって。かすり傷みたいだけど、痛くない?」
「礫が掠っただけだ。問題無い」

そういえば、敵がグレイブだかなんだかを唱えてきていたような。
にしても話が噛み合わない。わざとずらされている感じもあるけど。

「あたしは問題あるかとかじゃなくて、痛いかどうかって聞いたんだけど」
「お前がそれを聞いてなんになる」
「ファーストエイドくらいはかけてあげよっかなって思って」

はあ、とリカルドが溜息をついた。二度目。

「くだらん」
「くだらんってなによ! 人がせっかく心配してあげてるのに」
「要らぬ心配だ。治療が必要な傷ならば自分でやっている」

すっくとリカルドが立ち上がり、不満そうなあたしを見て一言。

「力は温存しておけ。またいつ戦闘になるかもわからんのだからな」

そう言って、手入れの終わった銃をあたしに押し付けて、リカルドはさっさと川の方へ歩いて行ってしまった。
黒い大きな背中は「もうこの話は終わりだ」とはっきり言っている。

「……意地っ張り」

治療くらいさせてくれたっていいじゃないの、ねえ。




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