APH−HETARIA’S NOVEL
□それってさ…
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「モロッシア〜♪」
今日、アメリカさんがやけに嬉しそうに俺に話しかけてきた。
嬉しすぎて持っていたブロック塀を足におとす。
「〜〜〜〜っ!!!」
「He…Hey、大丈夫かい、モロッシア」
「平気…っす…」
痛みで悶絶しながらも、アメリカさんに笑顔を見せるのは忘れない。
頬を引きつらせながら笑うと、アメリカさんも頬を引きつらせた。
「Sorry…なんか悪かったよ」
顔の前で両手を合わせるアメリカさん。
それを見て俺は慌てて首を振った。
「だから平気ですって!!謝らないで下さいよ…」
いや、まあ平気ってのは嘘だけどよ。
それにしたって、アメリカさんは悪くない。
悪いのは、話しかけられただけでだらしねぇことになった俺だ。
ひとまずその場を落ち着け、本題に入ってもらうことにした。
家に入り、アメリカさんの大好きなコーヒーを淹れ、アメリカさんと自分の前にカップを置く。
アメリカさんはありがとう、と一言いってカップに口をつけた。
「あの、それで今日はどんな用事で?」
「うん。それがね……あ、やっぱ言えない」
子供がするように、ぱっと口を手で塞ぐアメリカさん。
意味深な行動に俺は首をかしげた。
なんだ…?ちょっと気になる。
「なんですか?言ってくださいよ」
「駄目駄目。これは見てからのお楽しみなんだぞ」
楽しそうに口元をほころばせながら、アメリカさんはそう言った。
なんだかいたずらっ子みてぇだな。
俺を見ながらにやっと笑うアメリカさんに、そんなことを思った。
アメリカさんはコーヒーをあおる様に飲んだ後、「さて、」といいながら立ち上がった。
「モロッシア、今日は暇かい?」
「え?――ああ、一応…特に予定は…」
ポケットに手を突っ込み、スケジュール帳を確認。
白と水色のボーダー柄のスケジュール帳をめくっていると、アメリカさんのため息のようなものが聞こえた。
「わあ…。君、可愛いスケジュール帳もってるね」
いつのまにか覗き込んでいたアメリカさんがそう感想を漏らした。
かあっと顔が熱くなる。頭をバットで殴られたような衝撃だった。
思わずスケジュール帳を隠した。
「なんだい、隠さなくてもいいじゃないか」
「だ、だって可愛いって…!」
「え?あ、いや、そうだけどさぁ」
可愛いって、可愛いって!!
俺は恥ずかしさで死にそうだった。
かっこよくていかつい男を目指しているのに、可愛いなんていわれるのは心外だった。
ましてやあのアメリカさんにいわれるなんて……。
「あ、あの、モロッシア?」
困ったように俺の名前を呼ぶアメリカさんに、俺ははた、と正常に戻った。
顔をあげると困り顔のアメリカさん。
「す、すんません。ちょっと意識が飛んでて…」
頭を下げると、アメリカさんは心配そうに俺の行動を見つめてきた。
「そうなのかい?――じゃあ、話し続けるぞ」
俺はアメリカさんに「はい」と返事をしながら、後でこの手帳を捨てようと決めた。
そんな俺に、再び笑顔になったアメリカさんは、お願いをしてきた。
「今日、俺と一緒に喫茶店に寄ってくれないかなぁ?」
「へ?」
唐突にそんなお願いをされ、戸惑う俺。そんな俺を探るような目で見てくるアメリカさん。俺の反応を窺っているらしい。
な、なにが始まるんだ?
アメリカさん直々のお誘いというのは嬉しいけど、喫茶店というのは気になる。
アメリカさんって喫茶店好きだっだか?
俺が思案をめぐらせていると、アメリカさんが少し首をかしげた。
「あれ、だめ?」
「えっ!!いえいえそんなこと無いです!行きます!!っていうかむしろ行かせて下さい!!」
あ、あぶねー!!
もう少しでチャンスを逃すところだった。
俺の言葉にくすくす笑いながらアメリカさんがうなずく。
わ、笑われた……。
若干恥ずかしくなっちまってうつむく。
「よし、じゃあ行こうか。コーヒーありがとう、モロッシア」
席を立ち、玄関へと向かうアメリカさん。
その姿をぼーっと見ていると、アメリカさんが思い出したように振り返って、こういった。
「そういえばさっきのスケジュール帳、有名な文具メーカーの商品だよね。あれ、俺結構好きだぞ」
「…………」
やっぱり、捨てるの止めようかな。