APH−HETARIA’S NOVEL
□独立戦争前の…
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「くっ、…はっ!」
「おいおい、これだけでへばっちまって大丈夫なのか?これじゃ、一億年経ってもあの紅茶野郎にはかてねーぞ!!」
「は、はい…ぃ」
アルフレッドの鼻先でくるくると指をまわすのはギルベルト。
その指を曲げたかと思うと、いきなりアルフレッドの額にデコピンを食らわせた。
「ァウチッ!!……(なんたってプロイセンの訓練はこんなに厳しいんだ…)」
「なんだ、その目は。なにか気に食わないことでもあるか?」
「……なにも。先生」
「だろうなぁ。じゃあ、俺がどうしてデコピンしたかも分かるか?」
「…無断で休んだから……」
「ケッ。よく分かってるじゃねぇか。だったらさっさとその思いケツあげて残りのランニング続けろ!」
「はいぃ!!」
独立戦争前。
アルフレッドことアメリカ合衆国は、全く戦術を知らなかったため、戦争の得意なプロイセンに訓練を頼んだ。
プロイセンの訓練は超スパルタ式である。
訓練の合間合間に罵詈雑言を吐き散らし、言うとおりにできなければ追加の訓練&また罵詈雑言。
おまけに、今までイギリスが大事に育ててきたお坊ちゃんアメリカにはこのように厳しい訓練はあまりにも過酷だった。
「がっ…!!ぅ…」
「はーい今日の訓練終了。…っと。予定時間、一時間もオーバーかよ。ったく、本気で訓練する気あるのかね?アメリカには」
「す、すみ…ません…」
「おう。ほんとにすまないと思ってるなら、ここで腕立て伏せ追加で100回やってみろよ」
「……」
無言で地面に手をつくアルフレッドに、ぴゅっと口笛を吹くギルベルト。
「こんなに疲労困憊してても一応従うんだな。まあ、今日はその根性に免じて追加訓練は免除してやるよ。家かえって休め」
「…ありがとうございました」
「ん」
ギルベルトが後ろを向いた瞬間、その場に倒れこむアルフレッド。
その音に振り返ると、汗だくのアルフレッドが荒い息で横たわっていた。
「…疲れたか」
「はい……」
「ほんと、軟弱だよなぁ。お前。アーサーの野郎はどんな教育してたんだよ」
「……自分ちじゃ考えられないくらい自由を許してもらってた。あと、銃は触るのも禁止」
「そこまでされりゃ、戦争慣れしないお坊ちゃんになるのも当たり前だよなぁ、ケセセ」
「……」
「な、なんだよ。急に黙り込んじまって」
「…いや。先生のいうとおり、俺はお坊ちゃんだなって思って」
ギルベルトがアルフレッドの顔を盗み見た。
初めは傷一つない綺麗な肌が、過酷な訓練のせいで擦り傷だらけになっている。
(あーあ。せっかくの怪我一つない顔が…)
自分でそのようにしておいて、他人事のようにギルベルトは思った。
ギルベルトには、アルフレッドがそこまでしてイギリスの支配下から抜け出そうとする理由がわからない。
見たところ、イギリスのせいでアメリカが不自由をしているように見えないし、イギリスのことを憎んでいるようにもみえないからだ。
イギリスの下で弟をやっていれば、このように傷つくことも、厳しい現実に己をさらすこともない。
(こんなにいい条件そろった野郎のもと飛び出して、こいつは何がしたいんだ)
戦うのは生きるためだと教え込まれ、自らもそう考えるギルベルトには、あまりにもリスキーで得のない戦いは不思議に感じられた。
「……う〜腕が痛いんだぞ〜」
「ケセセセ。体動かしなれてない証拠だ。これからもっとハードな訓練が待ってるぞ」
「Oh……。最悪だぞ…」
「ふん。なら、アーサーの野郎との戦争、止めちまえばいいだろ」
「そ、それだけはダメ!!……なんです」
唇をかんで首をふるアルフレッド。
「理由は?」
「…それが、国民の意思だし……」
「おまえ自身は?」
「……これ以上、アーサーの…親の世話になるわけにもいかない」
「……ふーん」
要は、『独立』のための戦争ってわけか。
と納得するギルベルト。
子が親を乗り越えるのは自然なことであるしそう考えるとアルフレッドがアーサーに戦争を仕掛けるのも自然なことのように思えた。
(ま、せーぜー頑張れよ。『独立』戦争。)
ふっと息を吐き出して、立ち上がるギルベルト。
アルフレッドもいくらか体力を取り戻し、体を起こした。
「おい、アメリカ」
「はい」
「男なら、自分のいったことに責任持てよ」
「え?」
「アーサーの野郎に勝たせてやる。そのかわり、訓練の内容も厳しくするぞ」
「ぇ、ええ?!」
「じゃー、明日の朝5時。ここでなー」
「ちょ、ちょっとギルベルト…」
困ったな〜と頭をかくアルフレッドに、にやりと笑って見せるギルベルト。
(お前の理由なんざ、俺様には知ったこっちゃねぇが強くなりてえならその応援はしてやる。)
師匠として、やるべきことは徹底してやってやる。
☆ ☆
「というわけで、まずはじめと終わりに腕立て100回追加。あと、食べるものにも制限加えるぞ」
「Noooooooo!!」