APH−HETARIA’S NOVEL
□どうか気づかないでおくれよ
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7月4日。
Independenceday。
俺の、悲しい誕生日。
彼から独立を宣言したときから、もう既に俺の運命は決まっていたのかも知れない。
急速な成長と発展を遂げたこの国は、追いつけるものなんていないほど強くなった。
あっという間に他国と差をつけた。
世界一になるのなんて、簡単だった。
しかし、これほどの力を身につけると、今度は周囲からの風当たりも強くなる。
俺の判断は間違っていたの?
どうして皆俺を責めるの?
痛い。止めてよ。
自分の中の、まだ子供の部分は素直に泣いているのに、表を覆う俺はそれに耳を傾けず、ただ国であり続けるために行動し続ける。
アーサーは、ずっとこんなこと続けていたのかな。
疲れ果てたときにいつも思うのはそんなこと。
子供の時に見上げていたあの笑顔の裏には、この苦しみなんてなかったのかな。
優しい笑顔の後ろで、彼は傷ついてはいなかったのかな。
それはもちろん、傷ついてはいただろう。
己を守るためにさらした戦いが幾度となく彼の身を、心を傷つけて…。
だけど、俺に会うときの彼はいつも笑顔だった。
もう霞んでしまって思い出すことの出来ないあの笑顔は、確かに温かかった。
それを見るたびに、俺の心は熱くなって、嬉しくなって……愛を感じた。
あの温かい笑顔は、確かに本物だった。
疲れていても、抱え込んでいても、俺に見せてくれるのはいつも優しい顔。
それが、アーサーだった。