APH−HETARIA’S NOVEL

□どうか気づかないでおくれよ
2ページ/10ページ

 7月4日。

 Independenceday。

 俺の、悲しい誕生日。



 彼から独立を宣言したときから、もう既に俺の運命は決まっていたのかも知れない。
 急速な成長と発展を遂げたこの国は、追いつけるものなんていないほど強くなった。
 あっという間に他国と差をつけた。
 世界一になるのなんて、簡単だった。

 しかし、これほどの力を身につけると、今度は周囲からの風当たりも強くなる。


 俺の判断は間違っていたの?

 どうして皆俺を責めるの?

 痛い。止めてよ。


 自分の中の、まだ子供の部分は素直に泣いているのに、表を覆う俺はそれに耳を傾けず、ただ国であり続けるために行動し続ける。


 アーサーは、ずっとこんなこと続けていたのかな。

 疲れ果てたときにいつも思うのはそんなこと。


 子供の時に見上げていたあの笑顔の裏には、この苦しみなんてなかったのかな。
 優しい笑顔の後ろで、彼は傷ついてはいなかったのかな。


 それはもちろん、傷ついてはいただろう。
 己を守るためにさらした戦いが幾度となく彼の身を、心を傷つけて…。

 だけど、俺に会うときの彼はいつも笑顔だった。
 もう霞んでしまって思い出すことの出来ないあの笑顔は、確かに温かかった。
 それを見るたびに、俺の心は熱くなって、嬉しくなって……愛を感じた。

 あの温かい笑顔は、確かに本物だった。

 疲れていても、抱え込んでいても、俺に見せてくれるのはいつも優しい顔。
 それが、アーサーだった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ