short
□colors
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俺はあのときこの世界がこんなに美しいと初めて知った。
そう、お前という存在を知ってから。
俺の日常は殺伐としたものだった。
敵地への遠征、そこで行う殺戮、そこで聞く怒号、銃声、悲鳴、におってくるのは血と煙のにおい。頭の中は常に戦略。敵の先を読み攻略する。
遠征から戻れば重役どもとの会議。ミッションの報告、そして次のミッションの計画。
そしてまた戦闘。
単に「こなして」いく日々を繰り返す。
少年のころはまだいくらか戦闘に対する怯え、恐怖のようなものがあった気がする。しかし戦地へ赴く回数を重ねるたび、そのような感覚はなくなり、そして今では何も感じなくなってしまった。
あの遠征もいつもと変わらぬものだった。途中までは。
いつもどおり敵を攻略し、任務完了まであと一息というところだった。
途中で兵を二手に分け、一方を先鋒に、もう片方を後方支援のため待機させていた。
このような任務では俺が先鋒班に回ることはせず、待機班側で先鋒からの連絡を待っていた。
待機班の兵たちは疲れともうすぐ任務完了という安心感のためか息苦しそうな装備品のマスクを外している者もいた。
俺の見る風景も人物も皆灰色だった。
灰色の風景の中で、灰色の兵士達がいる。
しかし・・・
ひとつだけ灰色ではないものがあった。
これは・・・金色?
まるで引き寄せられるように俺は金色に輝くものに歩み寄る。