*H-book*
□Web拍手ログ集[壱]
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-願い- (景譲)
真っ青に透き通った、空。太陽から降り注ぐ、暖かな日差し。
柔らかな風になびく、真っ白な洗濯物。
「ふんふんふん〜♪」
それを嬉しそうに干していく、軍奉行。
「…うれしそうですね」
いつもより2割増し位に綻ぶ、笑み。
「こ〜んなにいいお天気なんだよ〜?なんか、嬉しくなってこない?」
パンっと洗濯物を広げ、物干しに干していく姿は…
戦場では多くの兵に指示を出して、勝利に命をかける武将…には見えない。
そのギャップに、つい笑いが込み上げてくる。
「よし、終わりっと♪」
干し終わった洗濯物を満足そうに眺めて、こちらへやってきた。
隣に座って、ごろんと横になる。
「こんな日位さ、戦いを忘れたいよね〜」
横寝で直こちらを見上げて笑う、無邪気な笑み。
つられて、こっちも笑みがこぼれる。
「…そうですね」
現代では見ることのできない、蒼く透き通った空。
こんな日くらいは、戦いを忘れていいのかもしれない…。
隣に習って横になれば、ひんやりとした床の感覚が心地よかった。
静かな午後の昼下がり。二人で過ごす、つかの間の休息。
床に置いた手に、そっと隣人の手が重なる。
その感触に視線をむければ、本当に幸せそうな笑顔と視線が合う。
「こんな日が…ずっと続けばいいね…」
戦を好まないこの人の、本音が聞こえた気がした。
本当は、こんな風に平和に暮らせる日々を夢みているのに…立場が、時代がそれを許してくれなくて…
優しい心を殺して、この人は戦に赴くんだ。
その葛藤を知っているから、傍にいたいと思った…
この人が、笑っていられるように…
「そうですね、景時さん」
触れた手を握り返して、この時が少しでも長く続くことを願った…
この手が、血に汚れることないときがやってくるまで
この人の傍に……