*H-book*

□夜明けまであと少し
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「起こしてしまったかな?まだ、夜が明けきっていないのだが…」
腕の中の温もりを感じつつ、背中に回した手で鷹通の髪をそっと撫でる。どこまでも、彼の性格にも似た真っ直ぐな髪。サラサラと、手から滑り落ちていく。
「…友雅殿は、お休みになられたのですか?」
「いや、君の寝顔を眺めるのに忙しくて…すっかり忘れていたよ…」
腕の中で眠る彼が愛しくて、一緒に眠ってしまっても良かったのだが、その寝顔をいつまでも眺めていたくて、結局寝ないまま今に至ってしまった。
「…また、そのようなことを……」
と、鷹通は耳まで真っ赤に染めながら、顔を隠すように俯いた。
「本当のことだよ…?」
そうそっと囁いて、髪に口吻を落す。
「せっかく…一緒にいられるのだから、眠ってしまっては勿体ないだろ…」
明け始める空。闇が消えてしまえば、この温もりから離れなければならない。もう会えない関係ではない。
しかし、いつでも一緒にいられる関係でもない…。
ただ少しでも…温もりを覚えていたいだけ…。



「…せっかくなどと…言わないでください…」


まだ赤みの残る顔を上げ、鷹通が少し悲しげな表情で言った。



「傍にいたいと願うのは……貴方だけではないのですから…」
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