*C-book*

□貴方の傍に…
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どうしても、今日中に、


誰よりも、貴方に会いたかった…


だって、今日は


大切な貴方の生まれた日、だから





[貴方の傍に・・・]



薄暗くなった、車窓から見える空。
普段はそんなに気にならない鈍行の速度が、今日は酷く遅く感じる。
(…迂闊だった…)
電車の扉に張り付くようにしながら、暮れていく空に焦りを覚える。
普段なら、母校である星奏学園にいるはずのこの時間。なのに、今日という日に限って、その場に自分はいない。
(突然の呼び出しはいつもだけど……よりによって今日なんて…)
少しついていない自分に、すこし溜息。その息で扉の窓が少し曇る。
今日は水曜日。いつもなら大学の講義が早めに終わり、オケ部の手伝いで高校に居るはずの日。
ところが、昼に突然バイト先から呼び出し。撮り忘れた音があると言われ、早めに行ってそうそうに終わらそうと思ったらいつものごとく案の定時間が延びに延びて。
収録が終わってスタジオを出たときには、すでに短針が6の数字に迫るころだった。
慌てて電車に乗り、緩やかに揺れる車内で駅への到着を焦る心を抑えながら待っている。
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