吟遊詩人(オリジナル詩)

□竜殺しと龍滅の騎士
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皆は聞いたことがあるだろうか?
龍の裔に生まれし者、
生まれながらに竜殺しを定められし、
末の娘のことを・・・・・・。


竜殺しの娘は凍る月夜の晩、
深き森に分け入り騎士と出逢った。
騎士は龍を滅した後であった。
娘は騎士に問う。
「何故、この者を滅した?」
悲しげに言う娘に騎士は言葉を返す。
「これは異なことを言う。そなたも龍をその手にかけたことがあるだろうに?」
娘は哀れみの目で騎士を見た。
「何も知らぬ無知なものよ。汝が滅したのは、いと賢き知恵のある龍。
 我が殺したのは、堕落せし竜。本能のあるがまま生きるもの。」
騎士は理解できず首を傾げる。
「汝の無知は若さ故か?しかし哀れなのは、偉大なる森を守りしハダル・トゥバン。貴女の不幸はこの騎士が知らぬものであったこと・・・・・。」
騎士は怒った、私のどこが無知であると。
「何も知らぬということは不幸だな・・・・・。」
とうとう騎士は剣を抜き、娘に向けた。
「私を愚弄するか娘!」
娘は即座に騎士の誇りを叩き割る。
飛び散る剣の欠片。
呆然と佇む騎士に娘は言った。
「我は汝にしばらくついてゆこう。
汝が自らの罪を知るその時まで。」
それから娘と騎士の奇妙な旅が始まる。

偉大なる龍と粗暴なる竜を追う物語の中、
全ての真実は月だけが知っている・・・・


神聖暦1390年 収録

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