平成幻想録・文

□第24説
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「ごちそうさまでした」



彼らが作ったご飯を食べ終えて片付けようとしたがすぐさま止められ後はやるから愛那は休んでてと言われ、かのじょはお言葉に甘えることにした。

彼らが洗い物をしている間にお風呂に入ろうと入浴の準備をして浴槽へ足を運ぶ。


「…ふぅ。気持ちい…」


愛那は色々と考えてしまっていた。
このまま紬を連れ戻せなかったらどうしよう、と…
彼女と仲直りしたいがために皆を巻き込んでしまったけど、迷惑ではなかっただろうかなどと、どんどん悪いことばかり考えてしまう。
一人になるとこういうことを考えてしまうからいやだ。



それでも私は彼女ともう一度戦うことになれば勝たなくてはならない…


「よしっ!」


自分の両頬を叩き、気合いを入れてお風呂をでた愛那
その様子を彼女の家から少し離れた場所から見ていた者がいた。


「ふっ、大丈夫そうだな…」


元の姿に戻ってからというもの、神社にも愛那の家にも居づらくて人に見つからない程度にあたりを放浪としている煌太。

愛那も修行を始めて疲れているところを邪魔をしたくないため、こうやって外から見守っているのだ。


否、これは言い訳にしかならないのかもしれない。
本当はこの姿で彼女にどう接したらいいのか分からないのだ。
"相模"の姿ならどんな風に近付いてもなんら違和感はなかったのだが、"煌太"の姿だとあの頃の記憶がよみがえってきて難しい。


「煌太ー!」

「愛那…?」


下を向くと愛那が手に何かを持ちながらブンブン手を振っていた。
軽い溜息をつきながら愛那の元へ行く。


「そんな薄着で誰かに襲われたらどうする」

「ちょっと、開口一番がそれ?」

「思ったことを言っただけだ。これを着ていろ」


Tシャツに短パンという格好をしている愛那に自分の羽織をかけてあげた。
前からかけたためかなりの至近距離で煌太は気にしていないようだったが、愛那はこういうこと自体初めてだったため、内心ドキドキだった。
それを出すまいとしていたが、鋭い煌太は気づいてしまう。


「顔が赤いが…やはり寒いのか?

「ち、ちがうよ!大丈夫、気にしないで!」


本気で心配してくる煌太に慌てて否定し、話をそらそうと自分が手にしていたものを彼に差し出した。


「…これはなんだ?」

「ご飯だよ、煌太食べてないでしょ?」

「俺は大丈夫だ」

「ちゃんと食べなきゃだめ」


夕飯の時に煌太が不在でもしかするとと思い、作ってきて正解だった。
今の姿では居づらいのかもしれないと、あえて触れなかったが愛那にとっては大切な存在。
けして無下にする事はできないのだ。


「入れ物は使い捨てだからどこかのゴミ箱に捨てておけばいいからね」

「行くのか?」

「そろそろ帰るよ、ホントはもっといたいんだけどあいつらが騒ぎだす頃だと思うし」

「騒ぐのは青龍だけだろ」

「ふふ、確かに。じゃぁまた明日ね、おやすみ」

「あぁ、おやすみ」


愛那が完全に家に入った後にお弁当を広げるとそこには彼が好物のものばかり入っていた。


「覚えていたのか……」


自分の事をちゃんと覚えてくれていたことに笑みをこぼす。
あの時は作れなかったものが今では全部手作りになっており成長したのだと実感させられた。

”ありがとう”
なんて、はずかしくて口に出して言えないけど夜空を見上げながらそう思った


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