平成幻想録・文
□第24説
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月が昇り、星々が輝き、綺麗な夜空の下でそれは行われていた。
あたりには建物ひとつなく、彼女たちが住んでいる街中とは思えないほどの更地であった。
息切れをする愛那、そして息切れはしてないもの汗をかいている柘榴。
「愛那ちゃん、あなたはこんなものではないでしょう?」
『…っそんなこと言ったって…、こんな、急に叩きこまないでくださいよ!!』
「そんなこと言ってもねぇ?悠長なことしてられないのよ、あなたもわかってるでしょ?それに強くなりた言っていたの、あなたなのよ?」
『それは…っ』
そんなこと分かっていた。
自分から強くなりたいといい修行相手に柘榴さんが付き、これほどの人材に恵まれ文句の言いようのない事など。
けれど、それとこれとは話が別だ。
色々なことを急に叩き込まれても体も脳もすぐ覚えることはできない。
何時間もの特訓で既に体はボロボロ。
時間がないのは重々承知。けれど休養も必要だ。
「はぁ、今日はここまでにしましょうか。明日も学校でしょ?」
『はい…』
座り込んでいる愛那に手を差し伸べ、立ち上がらせ家に帰った。
玄関を開けるとおいしそうな匂いもすれば焦げたような匂いが入り混じっていて何とも言えない思いを抱きながらリビングへ入っていった。
「あ、愛那…!!」
彼女にいち早く気づいた青龍が慌てた様子でぐちゃぐちゃになったキッチンを片そうとしていた。
「こ、これはだな…」
「…愛那のために…作った…」
「私の…ために…?」
「そうだぜ!いつもは玄武は作ってくれるけど今日はこいつの手を借りないで俺達三人で!」
食卓を見てみるとそこには形こそ歪だがいい匂いを漂わせながら盛られていて、隠そうとしているが彼らの手にはたくさんの絆創膏が貼ってあった。
愛那が友達を救うために修行をしているのに、自分達は何もできないもどかしさを感じていたようで、そこでお腹をすかして帰ってくる彼女のためにご飯を作ってあげようということになったのだ。
「包丁と火の扱いが少し危なかったがこいつらなりに頑張ってたぞ」
玄武がそういうと恥ずかしそうに目をそらす三人。
愛那は何も言わずに食卓に並べられた料理をパクリと食べた。
「おいしい…初めてにしては…」
「…愛那」
「ありがとう…」
私は、こんなにも支えられているんだ…
だからこそ――…
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