平成幻想録・文

□第23説
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その日、学校から帰った愛那は家には帰らず、神社へ足を運んだ。
十二天将、煌太はすでに集まっていた。
愛那は全員を見回すとあいているところに座った。


「お帰りなさい、愛那様」

『ただいま』


この日神社に集まったのは愛那への説明、そして、彼女の修行について話すためだ。
その説明とは柘榴ついて、そして、煌太に付いてだ。
彼女はそれについて聞きたいことが山ほどあった。
しかし、昨夜は自分も倒れてしまいすぐ寝てしまって聞くことがかなわなかった。


「皆様揃ったところで…といいたいところですがもう一人来ていませんわね…」

「悪かったわね、来るのが遅くて」

「あら、今来ましたの?愛那様を待たせるなんて何様なのでしょうか?」

「こっちだって仕事があるのよ。暇じゃないの」


いきなり襖が勢いよく開いたと思ったら、そこには柘榴が腰に手をあて貴人を睨みつけながら立っていた。
貴人も柘榴を見ると毒づいた。
愛那は柘榴を見ながらポカンとしていた。
それはそうだ。
口調こそは変わらないがいつものふんわり感がなくなりなんとなく鋭く感じた。


「愛那ちゃん、怪我、大丈夫?ごめんねぇ、私がもっと早く着いていれば…」

『え、あ、はい、大丈夫です。貴人さんが治してくれたので…』

「…そう。よかった」


貴人と聞いて少し間が空いたが安心したように笑顔になった。
それもつかの間。
すぐに真剣な表情になり、貴人と向き合った。
彼女もそれを感じ取り、先程の犬猿な雰囲気ではなくなっていた。


「あの結界…壊せるかもしれないわ」

「…!」

「何!?」

「結界はある場所を根源に張ってあるわ。張った本人はもちろんだけど、そこを壊せば結界は壊せるわ」

「そうですか…分かりましたわ。それで、貴方はどうしますの?」

「どういう意味かしら?」

「…今のままでやるの、と聞いていますの」

「…えぇ。その方が守りやすいからね」



二人のやり取りについていけていない者が数名。
その中に愛那も含まれているわけで、彼女は柘榴が何者かすら聞いていなかったためわけわかめだった。



『結界のことは分かったんだけど、柘榴さんって、一体何者なの…?』

「…言ってなかったわね。私はあなたと同業者であり、貴女と共にする者よ」

『え、え!?』

「ふふ、驚かせちゃったわね。でもまぁ私は同業者といっても血筋の関係でそこまで強くはないんだけどね。本当は貴女には無理してほしくないんだけど…でも私じゃ出来ないから…ごめんね」

『柘榴さん…』

「そんな顔しないで。私は貴女のサポートをするためにいるんだから。
それに修行も手伝えるし、私はうれしいわ。私たちにとって安倍晴明の血縁者である貴女に関われる事はとても光栄な事。
私は貴女が彼の子孫でよかったと思ってるの。安倍晴明の子孫だから守るんじゃない。
貴女だから守りたいのよ。愛那ちゃん…それだけは、分かって…?」


愛那の手をつかみながら必死に訴える柘榴。
そこでハッとした。
柘榴の手が震えていたのだ。
愛那はその手を一旦離し、彼の手を握った。


『別に、私は怒ってなんかいんだよ。それに、拒絶なんてしないよ。私、柘榴さんのこと大好きだもん!』


屈託の無い笑顔で言う彼女はとても眩しかった。
最初は、安倍晴明の子孫と聞いてどんな子なのだろうかと思っていたけど、関われば関わるほどとてもいい子で。
愛那が、子孫で本当に良かったと思うほど。


「ありがとう…」


その言葉を言いながら、この子だけは絶対に守ろうと誓った。




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