平成幻想録・文
□第21説
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早く、愛那の元へ行くために走る相模達。
時々木々が邪魔をしてうっとおしかったため、それを斬って行く始末。
後ろから付いてきている玄武玄武達は彼の豹変振りに言葉が見つからなかった。
「(そうだ…俺はあのときからずっと…)」
走りながらずっと考え事をしていた煌太。
小さい頃から愛那を見てきている彼。
例え彼女が自分を覚えていなくても、あの笑顔を見るために、ずっと、かげながら守ってきていたのだ。
それなのに、あんなやつ等のせいでそれがなくなってたまるか、と思っていた。
しばらくすると、戦闘が行われている場所の近くまで来たのか、声が聞こえてきた。
己の耳を頼りにそこへと向かっていく。
「狐の耳っていいんだな」
「少なくとも俺達よりはいいだろうな」
「我々人より獣は耳がいいですのよ…」
貴人の"人"発言に反応するが、聞かなかったことにして、相模を追いかけた。
「…見つけた…」
ついに愛那の元へとたどり着いた一行。
愛那を守りながら怨霊と戦っていた柘榴はいち早く彼らの存在に気づき、とりあえず怨霊を引き離すために鞭で巻きつけ遠くへ飛ばした。
「全く…来るのが遅いわよ、貴方達。おかげで私ボロボロじゃない」
「そんなこと知らん。俺は愛那を助けに来ただけだ」
「はぁ?てかあんた…」
イラついているのか口調が変わっている。
そして煌太に気づいたのか目を見開く柘榴。
彼のことを知っているのだろう。
「愛那、大丈夫か?」
愛那に近づき、そっとしゃがみこむ。
彼女がおさえている足首を見て表情を変える。
一方愛那は目の前の男性を見て目を見開き驚きを隠せずにいた。
だって彼は…。
『煌太……?』
「…覚えて、いたのか…」
『当たり前、じゃない。今まで忘れたことなんてなかった…』
愛那の目からは涙が流れ彼に抱きついた。
その行動に周りにいたものはあまりの出来事に驚愕した。
愛那は彼が相模だとはわかっていない。
そのため青龍達は目の前で起きていることが信じられなかった。
『煌太…!会いたかった!』
「愛那…」
うれしそうに涙を流す愛那の頭をやさしくなでる煌太に対し、その間放っておかれていたファルシュはギュッとこぶしを握り締めていた。
「(あんな顔、初めて見た…)」
今は自分と戦っているはずなのに、それがないものとされたようでむかついた反面悲しくもなった。
「あんた達、あたしを忘れてないかしら?」
「あら、忘れてないわよ?愛那ちゃんの足首を怪我させた相手、ですからね…」
「…っ」
「愛那に、怪我を…?」
二人の再会に水を差すようだが、今は目の前の敵をどうにかしないといけないため、
愛那の怪我を利用させてもらった柘榴。
煌太は愛那のことになると周りが見えなくなるためこうするのが一番早いのだ。
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