平成幻想録・文

□第19章
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「大丈夫、愛那ちゃん」

『あ、はい…あ、の…なんでここに、柘榴さんが…』

「それは後。今はこに忌々しい怨霊を退治するわよ」


愛那を助けに来たのはなんと柘榴だった。
すぐに反応することができず、とぎれとぎれに返事をする。
まだ信じられないくらいだ。
そっと手を差し伸べてくれるが足首を痛めてるため一人で立つことは不可能だ。
苦笑いしながら大丈夫というと、一瞬表情を歪めて彼女の頭を撫でた。


「私の大切な愛那ちゃんに怪我させたこと、後悔させてあげるわ…紬ちゃん。いえ、ファルシュちゃん、だったかしら、今は」

「っどいつもこいつもあたしの邪魔ばかりしやがって…なんなのよ!あたしはっ!」

『紬?』

「っ…!まぁどちらにせよ…あんたたちを倒すだけよ」



ファルシュはもう一度合図をして倒れていた怨霊達を立ち上がらせ、愛那と柘榴を襲わせた。
しかし、柘榴は自分ぶ愛用の武器である鞭でそれを目にも止まらぬ速さで攻撃する。
愛那はおろかファルシュにも見えない早さだった。



「ナンダ…オマエ…ニンゲン…チガウ…」

「あら、失礼ね。私はれっきとした人間よ。まぁちょっと特殊ではあるけれど」

「ニンゲン…コロス…」

「できるものなら…ねっ!!!」

「グワァァァァァアッ!!!」



柘榴の戦いをただただ見ているだけの愛那。
自分が弱いせいで人に迷惑をかけていることに改めて自分の不甲斐なさを痛感した。


「(なんなのよ…こんなの…っ)」


ファルシュは目の前の戦いを見て拳を握るしかなかった。
愛那だけだと思っていたから、彼女を捉えるのは簡単なはずなのに、柘榴まで出てきてしまった。
さっさと捕らえてしまえばよかったのに。
でも、できなかった自分がいる。心のどこかで否定している自分がいた。やらなくてはならないのに…。



「はぁはぁ…っ(やっぱり私一人じゃ足止めできない。せめて愛那ちゃんだけでも逃げられれば…っ)」



柘榴も一人で二体も相手をしていて限界が来ていた。
しかしここで自分が倒れてしまっては本末転倒だ。
いくら自分が男といえどもきついものがある。
先程まで押していたが今は体力のせいで逆に押されていた。


「あら?さっきまでの威勢はどうしたのかした?」

「…っ」


攻撃をかわしながら愛那を守るのはここまでつらいなんて思いもしていなかった。




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