平成幻想録・文

□第19章
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振り返るとそこには微笑むファルシュがいた。
これは絶体絶命かもしれない、そう思った。
自分は封印することしか出来ず、戦うことができない。
なんな中で攻撃を受けたら死んでしまうだろう。
逃げたかった。けれど足は動かずそこに立ち尽くすだけ。


「クス、怯えているの?そうよねぇ、貴女の周りにはいつも騎士-ナイト-がいたものね」

『…っ』


ファルシュは徐々に近づいてくる。
やっとのことで動い体で後ろに下がる。
そこで気づく。何故自分は逃げているのだろう、と。
そもそも彼女を助けに来たのだから逃げる必要はないのだ。
後づさるのをやめ、真っ直ぐファルシュを見つめる。


「何?その目は」

『…一緒に、帰ろう?私、紬と一緒に帰りたい』

「は?何言ってるの、貴女。あたしは貴女を裏切った。そもそも最初から友達でもなんでもなったのよ」


愛那の突然の発言に内心焦るファルシュ。
しかしそれは表情に出すことなく、馬鹿にしたような表情で愛那見る。

それでも、引くことはなく愛那は言葉を紡ぐ。


『でも、この数年間一緒に過ごしてした紬は偽りなんかじゃないでしょ?あの時だって―――』

「っ!うるさい!あたしは!あんたなんか、大ッ嫌いなのよ!」

『…紬』


キッ!と睨んだあと、クスッと笑うと指を鳴らした。
次の瞬間、怨霊が出てきたのだ。
しかも一体ではなく、二体。
これは流石にまずいと後づさる。


「あたしを怒らすから悪いのよ」

『(兎に角今は逃げなきゃ!)』


草が生え、所々木の根が邪魔をしながらもそこを走り、逃げ惑う。
元々体力があったわけではないため息が切れすぐにでも止まりたかった。
しかしすぐ後ろには怨霊とファルシュ。
走り続けるしかなかった。


「ほらほら。逃げてるだけじゃ何もならないわよ?」

『はぁ、はぁっ(も、無理…っ)』


足が震え、すぐそこに限界が来ていた。
そのためか足がもつれ転んでしまった。
必死で立ち上がろうとしても、足首に激痛がはしりどうすることもできなかった。


『(どうしようっ)』

「クスクス、おわりね…さようなら、愛那…」

『…!!』


怨霊に合図をし、それが襲ってくる直前、ほんの一瞬、瞬きをするその一瞬だけ、ファルシュの悲しい顔を見た。
すぐにまた戻ってしまったけれど…。


「ギヒヒヒヒィッ ヒンゲン、クウ」

「ニンゲン、ヨワイ」

『っ!!』


もうだめだ、そう思い、目を瞑ったその時だった。
怨霊たちの叫び声が聞こえたのは。
何が起こったのだろうかとそっと目を開けてみるとそこには信じられない人がっていたのだ。



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