平成幻想録・文

□第18章
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朝ごはんも食べ終わり、学校に行く愛那。
彼らには笑顔を振りまいてたが内心は不安で仕方なかった。
その理由は言わずもがな。


『(学校…来るのかな…)』

「愛那おはよー!」

『あ、おはよ!』

「どうした?なんか元気ない?」

『んー?なんでもないよ!』


チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきても紬は来ることはなかった。
しかしこのあとの先生の発言に驚きを隠せなかった。


「今日も全員揃ってるなーっ!関心関心!んじゃ今日の予定だが…」


そこから先、頭が真っ白になっていたため、何も入ってこなかった。
チラッと後ろを向いてみると彼女の後ろの席だったはずの紬の席はなく、違う人が座っていた。

もしかしたら、紬の存在は―――…。

SHLも終わり、愛那は友人に気になっていることを確かめることにした。


『ね、ねぇ、靭屋紬って知ってる?』

「靭屋紬ぃ?誰よそれ?」

「え、他校の子?うちの学校にはそんな子いないよね?」

『あ、ううん。知らないならいいの』


友人達は皆不思議そうにしていた。
愛那の様子がおかしいと心配してくれたが、大丈夫と苦笑いした。

その日の放課後、友人の誘いを断り、神社へ向かった。
心なしか結界が強くなっている気がした。


「愛那ちゃん、お帰りなさい。貴人が待ってるわ」

『天后…。うん、分った』


いつも通ってる道なのにとても長く感じた。
彼女の部屋の前まで来ると、軽く深呼吸をして、ふすまに手を掛け、開けた。


『貴人さん…』

「愛那様、お帰りなさい。…その様子だと何かあったようですわね」

『…紬が存在しないものになってた』

「そう、ですの…もう彼女は学校にはお戻りにならないようですわね。己の存在を自ら消したということは」

『皆、紬のこと忘れちゃってた…寂しく、ないのかな…』

「…愛那様」

『だって、ずっと…一緒に過ごしてきたのに…』


貴人はその言葉に何も返すことができず、愛那の言葉は儚く消えていった。
近くに待機していた大裳達も顔を伏せているだけだった。



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