平成幻想録・文

□第18章
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「…そうですか…愛那様のご友人が…」


あれから少しして貴人の元へと向かった愛那達。
一応十二天将の長だから伝えておかないといけないと思ったためだ。
愛那には荷が重すぎるため伝えるのは相模だったが。


「ファルシュ…」

「どうかしましたか?」

「あぁ、いえ…少し、気になることがあっただけですわ。これは調べてみないとわかりませんが」

『(よく考えてみれば最近のあの子どこかおかしかったっけ…何で、気づかなかったんだろう)』

「愛那様?」


貴人は気になることが出来たようで、後ほど伝える、と言う。
十二天将が全員集まっている為もあるが、ピリピリしていた。
そんななか、愛那は一人の世界に入っていた。
名前を呼ばれても気づかないほど。


「愛那様」

『…!』


貴人はゆっくりと、彼女に近づき傍に座る。
そして、膝の上に置かれた手を優しく包む。
一瞬ビクリとして目線を貴人に合わせる。


「愛那様は、どうしたいですか?」

『え?』

「紬様と、どうしたいですか?」


"紬"という言葉にすら肩がビクつく。
しかも彼女とどうしたいなんて、言ったところでもう、手遅れなのに。
でも、希望が、少しでもあるのなら…


『紬は…今思えば何かに耐えてるようだった。敵だったら、そんなことない筈なのに…私はそれが知りたい…。もう一度、友達に、親友になりたい。最初の…友達、だから…』

「そうですか…では、もう決まりですわね」

『え?』

「紬様を、救えるのは貴女だけですわ」

『…!』


ほんの一瞬だが目を見開き貴人を見る愛那。
貴人は優しく微笑みながら愛那の頭を撫でている。
愛那は膝の上にある拳をギュッと握っていた。
その後、貴人達が見た時は覚悟を決めた顔をしていた。




「愛那…」

『私やるよ。紬を助けるために…』


助ける、それを聞き玄武達も頷き、彼女の頭をなでた。

その日、いろいろありすぎてご飯を食べずにすぐに寝てしまった。
起きた時には既に朝になっていた。
時計を見てみれば4時を指していた。
まだ、こんな時間なのか…そう思いながら布団から出る。


こんなに早く起きてしまってもやることもなく、ソファに腰掛け暫くボーっとしていると、テーブルにコトっとカップが置かれ、肩にブランケットがかけられた。
顔を上げるとそこにいたのは相模だった。


「そんな薄着でいては風邪引きますよ」

『相模…昨日の今日で…なんか怖くなっちゃった。紬のあの表情を思い出しちゃって…』

「…愛那様は一人ではありません。僕達がいます。だから、一人で抱え込まないでください。僕達を、頼ってください」

『…っ』


涙を一筋流しながら頷いた。

時計の針は5時をさしており玄武達も起き出してくる頃。
愛那は急いでそれを拭い、台所まで行く。


「ん?早いな、愛那。相模もいたのか」

『おはよう、玄武。目が覚めちゃって』

「愛那様が寝ているのに自分はうかうか寝ていられません」


彼の発言はツッコミどころが多々あるがあえて何も言わずにスルーする。
朝食は愛那が作るというのでそれを手伝うことにした玄武。
愛那は楽しそうにしているが、それでは玄武は騙せなかった。
しかし彼はそれに対し言うわけでもなかった。

分かってるのだ。
愛那が先程までどうしていたのかなど。
しかし、彼女が聞いて欲しくないなら敢えて気づいていないふりをする。
無理に聞いたとしても誤魔化されてしまうから。


「(愛那、俺は…)」


彼女の隣で何とも言えないような表情をしていた。


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