平成幻想録・文
□第17説
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『ここにくると気が安らぐ…』
「そうだね…あたしもだよ」
『私達にとって思い出のある場所だからね』
「いろんな意味でね!まさか迷うとは思ってなかったし」
クスクスと笑いながら話す紬。
顔を真っ赤にしながらそれは言わないでよっと紬に肩をたたく。
夜であったため大きな声ではないが。
その様子を少し遠く、気の上から二人…いや紬を見ている六合と勾陣。
というのも、裏山に入ってから彼女のまとう雰囲気がじょじょに変化してきてるのだ。
愛那は気づいていないようだが、六合達にはすぐわかった。
彼女は普通の人だから何か影響しているのかもしれない、と気を張りながら監視していた。
『(あの人達…私が気付いていないとでも思ってるのかな…私だって気付くよ…)』
「愛那…?どうかした?」
『あ、ううん、なんでもない!そろそろ帰ろうか。少し冷えてきたし』
「そうだね!」
帰り仕度をはじめて山を降りようとした時、か違う道で帰ってみないかといわれ、面白そうだからそうしようと、急遽進路を変更することに。
それだけならまだよかった。
歩いていくことによってあの結界が近づいていた。
六合達天将、狐である相模は入ることができない。
そこで何かあっては示しがつかない。
「どうする、勾陣」
「…少し待て。もしかしたら…」
木の上を飛び越えながら何かを考えている勾陣。何か考えがあるのかと彼女を横目で見る。
「!六合と勾陣も来ていたのか…」
「玄武…貴人に言われて。それじゃなくても心配だったけどな」
「愛那様達、あそこに入っていきますが、いいのですか?」
「あぁ。少し待っていてくれ。私が合図をしたらあの中に入るぞ。いいか、躊躇するな。すぐに入らなきゃきっと入れないだろうから」
一体どういうことなのか、とうい疑問を残しながらも、合図を静かに待っていた。
「愛那…」
『んー?』
「…やっぱなんでもない!そんなことより!明日、柘榴さんのとこ行こう!」
『あ、行く行く!』
明日の約束をしてとてもうれしそうな愛那だが、その反面、紬はどこか表情が暗かった。
「今だ!あの中に入れ!」
「え、え!?」
「早くしろ!」
勾陣の合図で結界の中に入っていく。
彼らが入ろうとするとバチッと音がして弾かれてしまうが、この時はなぜか入ることができた。
勾陣はやはり…と思いながらも、周りは分かっていなかった。
説明は愛那達の後を追いながら話すから少し待てと言われ、とりあえず、彼女達を追うことにした。
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