平成幻想録・文

□第17説
1ページ/3ページ






彼女は分かっていたのかもしれない。




こうなることを。





貴人から気をつけるように言われて数日がたち、暫くは怨霊も出ず平和に過ごしていた。

いや、十二天将達は皆警戒していた。
呑気なのは愛那だけだ。
しかし、それにも気づかずニコニコとしている。

貴人達は愛那を守りつつ、彼女にも強くなってもらいたいと考えているため、忙しい。

愛那自身あまり意識していないため、何もできないのだが。


そんな時愛那から告げられた言葉に貴人達は動揺していた。


「裏山に…ですか?」

『うん。友達と行くの!あそこから見る景色すきなんだぁ』

「…そうですね。私も好きですわ。頂上から見る景色は時を経て…変わっていきますが、思い出がたくさん詰まっていますわ」

『貴人さん達はずっと生きてて時代の変化を見てきてるんだもんねぇ…』


目を細めて、思い出に浸るが脳裏にはあの、結界が浮かんでいた。
ある一角にだけ張られている結界。
そこに愛那達が入り込まなければいいのだが。


「裏山に行くのはいいが気をつけていくのじゃぞ」

『分かってる。心配しないで!』

「本当に大情y部かよ?おれも一緒に行ってやろうか?」

『来なくていいから!あんた来るといろんな意味で危険!』

「おい、それどういう意味だよ」

「うるさい。そのままの意味だ」

「あ゛ぁ゛?」


騰蛇と六合の喧嘩に、周りはもうため息をつくばかり。
止めてもどうせまた喧嘩が始まる。
いっそのこと気がすむまでやらせてしまえばいいと考え付いたようだ。


『じゃぁ、行ってきます!』

「いってらっしゃい!」


温かい目で愛那を見送った後、静かだけれど、凛とした声で勾陣と大裳の名を呼んだ。
二人はうなずくとそのまま姿を消した。
自らいけないことを悔しく思いながら、彼女が無事でいることを祈るしかなかった。

玄武達も、愛那が裏山へ行くということを聞き、気が気でなかった。
かといって、着いて行くと言えるはずもなく。彼女には悪いがこっそりついていくことにした。


「何も、起こらないといいが…」


裏山に行く時にはすでに日が落ちて月が昇っており、周りも暗く、あまりよく見えない。
愛那達はもう何度も来ているのでライトを持っていくのは常識であった。
玄武達もいくら暗闇でも視界がいいとは言え、やはり持って行ったほうがいいと考え、一人一人所持していた。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ