平成幻想録・文
□第13説
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『…もう遅いから、帰ろう?』
「…うん…」
その帰り道、誰として会話をすることはなかった。
「送ってくれくれてありがとう。玄武さん達も、ありがとうございました」
弱々しくお礼をする。
内心納得がいっていないのだ。
自分だって愛那をを支えたいのに。
そう思いながら。
お互いに大好きだから、すれ違っている。
そんな二人を見ていた四神と相模はもどかしい気持ちでいた。
暫く、紬の家の前で立っていたが、冬も近づくこの季節では、外にいるだけで寒かった。
早く家に帰って暖まろうと彼らに笑いかけた。
「愛那…」
『…何?』
「つらく、ないのか…?」
『…ここで辛いって言ってしまえば何かが変わるの?』
歩いていた足をとめ、朱雀の顔を見る。
その表情は今にも泣きそうで、見ていられなかった。
『あのこは私の…はじめてできた友達なの。
だから、あのこが悲しむようなことはしたくないんだ。』
「それは…あのこが望んでいること?」
『…。私はあのこを巻き込むことらしないよ。これから先も…』
そのためなら話さなくなってもいい。
そう言い、歩き出したのだった。
家に着いてからもご飯を食べずにすぐに布団に入ってしまい、愛那と四神、相模達との溝も出来てしまった。
そして次の日、愛那はいつもより早く起きてしまい、昨夜風呂にも入らず寝てしまったため、シャワーを浴びることにした。
風呂を出て、制服に着替えリビングに行くといつものように朝食を作る玄武の姿がある。
愛那はソファに座り、スカートを握りしめた。
『私、間違ってるのかな…』
「…。それは、お前達が決めることであって俺達が干渉することではない。だが…お前が決めたことなら…俺は、俺達はついていく、どこまでもな」
玄武は愛那の頭に手をポンッとおいて料理をテーブルに置いて行った。
彼はは本当に愛那のことをよく分かっている。
伊達に八年間も一緒にいたわけではないようだ。
まぁ、亀としてだけど。
学校へ行くと、紬はまだ来ていない。
時間も早いため来ているはずもないのだが。
誰もいないこの空間が異様にむなしく感じた。
どこか息苦しいような…。
外を見れば朝練をしている部活の人達がいる。
彼等はもうすぐ大会があり、そのために練習を積み重ねて頑張っているのだ。
怨霊のせいで、彼らの夢を踏みにじることはしたくない。
でも、どうすれば救えるのか…そして、はたして自分ができるのか…
そういう思いがどんどんあふれてくる。
一人でいるせいかもしれない。
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