平成幻想録・文
□第13説
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「何してんの?って…何これっ」
紬は愛那に近づくと血相をかえた。
それはそうだろう。
普通の公園に狼がいるのだから。
愛那はそこに立ち尽くす。
彼女の目の前にいる狼は今にも襲ってきそうな勢いだ。
紬は恐ろしさから肩が震えていた。
「げ、玄武さんに、相模さん達…なんで、逃げないんですか…!」
愛那の腕をつかみながら逃げることを促す。
しかし、愛那も玄武達もその場から動こうとしない。
そしてついにそれは襲いかかってきた。
「ひっ」
愛那は怯えて悲鳴を上げる紬の前に立つ。
彼女だって怖い、だが友人を守るためならばそんなもの気にしていられない。
「ま、愛那…っ」
『大丈夫だから…』
玄武や相模達は少しでも奴を弱めるため、戦っている。
愛那は彼らを見守るしかない。
彼女は最後に封印することしかできないから。
「キャンッ!!」
朱雀が奴にナイフを飛ばしまくり、それを避けることに気を取られていたためか、白虎の薙刀に気づかず、宙に浮き、そのまま地面に落ちた。
「愛那!今だ!」
その声に頷き、札を構える。
『汝そのさまよえる魂よ、我が名のもとにおいてここに封印する!』
そう唱えると狼の周りに眩い光が現れた。
それと同時に愛那の手にあった札もその光に引き寄せられいく。
光は狼をつつみ、徐々に小さくなっていき、天へ昇っていった。
『…ふぅ』
「愛那様!やりましたね!」
『…うん』
封印が終わり、安心していたがそこまでまた別の問題が発生する。
それは一般人に見られたこと。
まして親友に。
「…愛那、これはどういうこと、なの…?」
『紬…これは、その…』
紬に言うことをためらった。
言ってしまえば彼女巻き込んでしまうことになってしまうから。
ぎゅっと拳を握り、俯いているとふわりと体が包み込まれた。
紬が愛那を抱き締めたのだ。
「一人で…なんでも溜め込まないでよ…私、戦うことはできないよ。でもね、支えることはできるよ。だから…」
『…っありがとう、紬。私もう十分支えられてるよ』
でも、それとこれは話が別。
巻き込むことはできないよ…
苦笑いしながら紬を自分から引き離す。
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